2016年5月9日月曜日
正身端座、懸腕直筆 [田邉古邨と吉田鷹村」
話:吉田鷹村
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わたしが(田邉古邨に)入門を申しでたとき、最初に言われたのが
「一生やるか」
というお言葉でした。思わず
「はい」
と答えて、それから今日まで70年以上つづけてきたわけです。50年ちかく師事してきました。
(田邉古邨)先生の指導は
「正身端座(しょうしんたんざ)」
「懸腕直筆(けんわんちょくひつ)」
といって、体をグッと正して筆をまっすぐに立て、歴代の諸々の古典、漢字では楷書、行書、草書、それに日本の仮名をひたすら臨書する、という方法です。
半紙をわきに積んで、きれいな水を硯(すずり)に落として墨をする。
そこで気持ちをととのえて、毎日4〜5時間、黙々と書きつづける。
それを4年ほど徹底してやりました。
どのくらい続けたころからか、書いていくうちにフッと自分というものを忘れて、ただ筆が動いていく感覚になることがありました。
いま考えると、禅の修行そのものなんです。
しかも、非常に立派な人が書いた古典を手本として臨書するわけですから、みずから古人の情操の追体験ということになります。そんなとき、「書によって自分というものを自分で一段高いところに持ちあげることができるんだ」という実感をもちましたね。
古人の性情をくみ、みずからの性情をたかめ、豊かにすることが大切なんです。
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引用:致知2016年6月号
吉田鷹村「94歳、まだ前進せねば」
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