隕石は、どこから来るのか?
その大部分は、火星と木星のあいだにある「小惑星帯(アステロイドベルト、asteroid belt)」からやって来る。この一帯は小惑星の宝庫であり、軌道がわかっているものだけでも30万個以上の小惑星が確認されている。
そうした小惑星のカケラが、ときに隕石となて地球に飛来するわけだ。その成分を分析してみると「地球にはない物質」が含まれていることがある。
そして不思議なことに、隕石の多くが「46億年前」に形成されていることが判っている。月もまた然り。
「つまり、われわれの太陽系が誕生したのは、その頃(46億年前)なんじゃないかと、隕石が教えてくれているわけです」
1970〜80年代、理論天文学者の林忠四郎氏は、太陽系の形成過程を「京都モデル」として提唱した。
そのシナリオはこうだ。
およそ46億年前、太陽の元となる「原始太陽」が誕生。その周りをガス(水素やヘリウム)や塵(炭素や砂)取り囲み、円盤のような形になる(原始太陽系円盤)。そして、ガスや塵が濃くなった部分から「微惑星」が形成され、衝突や合体をくりかえして、より大きな「原始惑星」へと成長していく。さらに衝突・合体がくりかえされると、はい、地球のできあがり、となる。
国立天文台の小久保英一郎氏は、太陽系が現在の形にまで成長する様子を、スーパーコンピューターを用いて再現してみた。
小久保氏は何十万という塵の粒を、コンピューターにインプット。重力や運動法則にしたがって、それら無数の粒々がどんな動きをしていくのかを、一秒間に1兆回の計算をして観察。
すると、最初は均一に散らばっていた粒々に、すこしずつムラが生じはじめる。そのムラは時間とともにだんだんと大きくなっていき、10万年経ったころには、大きさが数kmの「微惑星」があらわれていた。そして衝突・合体をくりかえしながら直径が1,000kmを超える「原始惑星」が誕生。一億年もすると地球サイズの惑星になっていた。
小久保氏は言う。
「原始惑星が平均10回衝突すると、地球サイズの惑星ができあがります。地球のような惑星ができるのに奇跡は必要ありません。太陽系の外にはすでに、地球と似たような環境にある惑星がたくさん見つかっています」
ところで、われわれの太陽系には、大きくわけて2つのタイプの惑星が存在する。一つは地球をはじめとする小さめの岩石系、そしてもう一つは木星のような巨大なガス惑星。
「どうして、木星や土星はこうもデカいんだと思いますか?」
それは「太陽からの距離」が深く関係しているという。
「太陽から近いところでは、太陽から発せられる凄まじいエネルギーによって、ガスなどの軽い成分が吹き飛ばされてしまいます。その結果、太陽に近い水星・金星・地球・火星には、個体である岩石ばかりが残されました。一方、太陽からより遠い木星・土星には、軽いガス成分が大量に吹き飛ばされてきました。だから、ぶよぶよと巨大化することができたんです」
では、もっと遠くにある天王星や海王星は、なぜ小さいのだろう?
「太陽から遠すぎるからです。星をつくる材料であるガスや塵があまり飛んでこなかったと考えられています」
30年ほど前、ハワイのすばる望遠鏡が「円盤状のガス」を世界ではじめて発見した。
それは「ぎょしゃ座」の星。誕生して100万年ぐらいの若い恒星だった。その周りには、林忠四郎氏の「京都モデル(のちに標準モデルとなる)」そのままに、円盤のようなガスが渦巻いていたのである。
2011年、観測装置の進歩によって、ぎょしゃ座AB星の円盤の一部に「切れ目」があることが確認された。
「ここには、生まれようとしている惑星があるのではないかと考えられています」