2013年12月1日日曜日

骨盤が後傾している日本人



話:松原秀樹




欧米人や黒人が大股でさっそうと歩いている姿にあこがれるのも無理はありません。しかし残念ながら、日本人の骨格は白人や黒人とは異なるため、適した動き方も異なります。そのことを示す良い例が短距離走の世界にあります。

100m走の世界では、長いあいだ「日本人・東洋人の体型や筋力では9秒台はおろか、白人の世界記録”10秒00”に並ぶことさえ不可能、(オリンピックの)メダルは絶対無理」といわれてきました。ところが1998年12月、バンコクで行われたアジア大会で伊藤浩司(当時28歳)選手がトップでゴールした瞬間、電光掲示板の掲示は「9秒99」を示していました(のちに”10秒00”に修正されました)。

さらに、伊藤選手の後輩・末續(すえつぐ)慎吾選手が2003年の世界陸上選手権200m走で、この種目で日本人初の銅メダリストとなりました。日本人をふくめた東洋人が絶対不可能といわれたタイム(!)、常識を打ち破ったその秘訣は何だったのでしょうか? 末續選手は、「世界の常識を疑うことが大事だ。世界の普通は(日本人にとって)普通ではない」と強調しています。

かつて陸上競技の世界では「地面をつま先で強く蹴って、太腿を高くあげる走法」が主流で、陸上選手たちは必ずといっていいほど「腿(もも)上げトレーニング」を行っていました。ところが日本人の場合は、この腿を高く上げることによって逆にスピードが遅くなってしまうというのです。末續慎吾選手は、膝が下腹どころか股関節の高さにも達しないという非常に低いポジションをキープして走っています。この走法は「忍者走り」とよばれ、世界から注目を集めています。

なぜ日本人の場合は、腿を高く上げると失速してしまうのか? その秘密を科学的に解明したのは、初動負荷理論の提唱者・小山裕史(やすし)トレーナーです。

「黒人や白人の骨格は、骨盤が”前傾”しています。そのため腿を高く上げても重心が低く抑えられ、キック力を効率よく前方への推進力に変えられます。それに対して日本人の骨格は、骨盤が”後傾”しています。そのため、腿を高く上げると背骨が起きてしまって重心が上がり、せっかくのキック力が前方ではなく上方に向いてしまうのです。したがって、日本人は腿を高く上げるような走法では絶対に速くは走れないのです(小山裕史談『スポーツ大陸—忍者走りが世界を変えた』NHK-BS)」





引用:松原秀樹『整体×武道 アイキ・ウォーキング―中心軸を手に入れてみるみる体が細くなる歩き方

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