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木村の人生がNHKの「プロフェッショナル仕事の流儀」という番組で紹介されたのが、その12月の初めのことだった。
「あの時、あなたがしゃべった一言一言が心に残ってますって、いろんな人が言ってよこすんだけどな。わたし何をしゃべったべなぁ…。バカだから、よく覚えてないのさ」
そう言って、木村は「歯のない口」を大きく開けて笑った。
木村はまだ50代だったが、すでにほとんどの歯を失ってしまっていた。
「わたしはリンゴの葉と自分の歯を引き替えにしたのさ」
と、下手なダジャレを言って、自分で大笑いしている。
「自殺を考えてたっていう若い人からも電話あったな。何をやっても駄目で、就職口もないし、家へも戻れない。それで死ぬことを考えていたんだけど、あのテレビを見て思い直しました、やっと生きる気持ちが湧きましたとな」
木村さんはそういう時、どんな話をするんですか、と聞くと、
「『バカになればいいんだよ』と言いました。死ぬくらいなら、その前に一回はバカになってみたらいい。同じこと(自殺)を考えた先輩として、ひとつだけわかったことがある。
ひとつのものに狂えば、いつか必ず答えに巡り合うことができるんだよ、
とな」
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