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広大な整然としたトウモロコシ畑ができあがった。
品種はハニーバンタム。土地がよく肥えていたせいか、出来はきわめて良好だった。
ただ、タヌキの被害に悩まされた。収穫間際になると、たっぷりと太ったトウモロコシが、ごっそり喰われてしまうのだ。
「それで、畑のあっちこっちに『トラバサミ(虎鋏)』をしかけた」
「そしたら、子ダヌキがかかったの。母親のタヌキもすぐそばにいてさ、わたしが近づいても逃げようとしないのな。
トラバサミをはずしてやろうと思って手を出したら、子ダヌキは歯をむいて暴れるわけだ。かわいそうだけど、長靴で頭をふんづけてトラバサミを外して逃してやった。
ところが、逃げないのよ。わたしの目の前で、母親が子ダヌキの足、怪我したところを一生懸命なめているのな。その姿を見て『ずいぶん罪なことしたなぁ』と思ったよ。
それで、できの悪いトウモロコシをまとめて、畑の端に置いてきた。
次の朝、畑に行ったら、ひとつ残らずなくなっていた。と同時に、タヌキの被害が何もなかったのな。それでトラバサミをやめて、収穫するたびに歯っ欠けのトウモロコシを置いてくるようにした。それからタヌキの被害がほとんどなくなった。
だから、人間がよ、『全部を持っていくから被害を受けるんではないのか』とな。そんなこと考えました。もともとはタヌキの住処だったところを畑にしたんだからな」
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