お汁粉の甘さを引き立てるためには「塩」を入れる。
火がなければ水は際立たず、殺意がなければ愛もまた然り。
それとは反対のものとの「葛藤」によって、そのものの存在がより明らかになる。
「能」において
扇を前に出すとき、意識を前におかず、むしろ後ろにおくという。
前に出るときの意識は後ろ、下がるときは前。
多くの人は自分が「歩けていない」ことに気づいていない、と能楽師の安田登氏は言う。
また、音は出したところではなく、出さないところで伝え合う。
『毛詩(詩経)』にいう
「詩は志の之く所なり」
心の中にある「志」は、外に現れて「詩」となる。
言葉にしても足らざれば嗟歎する。
嗟歎しても足らざれば永歌する。
永歌して足らざれば、知らず手は舞い、足を踏む。
出典:内田樹『
日本の身体』
0 件のコメント:
コメントを投稿