2014年6月13日金曜日

反対のものとの「葛藤」




お汁粉の甘さを引き立てるためには「塩」を入れる。

火がなければ水は際立たず、殺意がなければ愛もまた然り。

それとは反対のものとの「葛藤」によって、そのものの存在がより明らかになる。



「能」において

扇を前に出すとき、意識を前におかず、むしろ後ろにおくという。

前に出るときの意識は後ろ、下がるときは前。

多くの人は自分が「歩けていない」ことに気づいていない、と能楽師の安田登氏は言う。



また、音は出したところではなく、出さないところで伝え合う。








『毛詩(詩経)』にいう

「詩は志の之く所なり」

心の中にある「志」は、外に現れて「詩」となる。



言葉にしても足らざれば嗟歎する。

嗟歎しても足らざれば永歌する。

永歌して足らざれば、知らず手は舞い、足を踏む。







出典:内田樹『日本の身体



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