2016年12月15日木曜日

ネコ背になる本当の理由とは?[小池義孝]






〜小池義孝『ねこ背は治る!』より〜


知れば、ねこ背が治る!


胸をはって背筋を伸ばす。

そのような格好を「良い姿勢」だと思っている人がほとんどです。

私も子供のころ、嫌というほど、この姿勢をしつけられました。少しでも気をゆるめると、「背筋、ピンッ!」と母の厳しい声が飛んできたものです。がんばってこの格好を維持していれば、やがては良い姿勢が当たり前になる。その頃は、そんな風に漠然と考えていました。それは母も同じだったようです。

何年も何年も、根気よくしつけられ続けられましたが、私のねこ背が矯正される様子はありませんでした。この方法でねこ背を矯正するのは、私には不可能だと、ついには諦めました。これが20代半ばのころです。





結局は、無理に背筋をのばす解決方法が、そもそもの間違いです。それでは「姿勢が悪いから、姿勢が悪い」と言っているようなものです。ねこ背になってしまう原因は、決して「ねこ背だから」ではありません、正解を知れば、姿勢の改善は一瞬です。

人間がねこ背になってしまうのは、立っている時、座っている時です。寝ている時にはねこ背になりません。これは当たり前ですけれども、もう一つ、ねこ背にならない状態があります。

それは膝立ちをしている時です。膝立ちをしていると、背筋がスッと伸びます。実際に試してみてください。いかがでしょうか。普段はねこ背ぎみの人でも、自然な形で良い姿勢になれたと思います。無理にがんばって背筋を伸ばす必要もありません。





ではなぜ、膝立ちだと姿勢が良くなるのでしょうか?

全身の骨格図を見てください。大腿の太い骨を「大腿骨(だいたいこつ)」と呼びます。骨盤と上半身全体が、大腿骨に支えられています。太く頼もしい骨に乗っているので、骨盤が安定しています。変な傾き方はしていません。ですから背骨もその上で、きれいに伸びていられます。

美しい姿勢は、こんな風につくられていきます。骨が骨を自然に支えて、無理のない状態です。





また、右膝のアップの図を見てください。膝が一点で重さを支えているのがわかります。膝のすぐ上には大腿骨があります。

膝立ちは無条件に、大腿骨で身体を支える姿勢をつくります。大腿骨に上手に乗れば、人間は良い姿勢に楽に到達できるのです。

良い姿勢とは、このように、骨が自然と立っている状態を指します。決して無理に背筋をのばして、強引につくるものではありません。膝立ちをした時に、楽にスッと伸びる背筋。ここに正解があります。



膝立ちのときは良くても、足の裏で立つと、やはりねこ背に戻ってしまいます。今から、その理由を説明します。ねこ背が治る光明は、もう見えています。

膝で立つのと、足の裏で立つのとでは、何が異なるのでしょうか。大腿骨は膝と接していますが、足の裏からは遠く離れています。この違いがあります。膝の下にスネの骨が2本あって、足首があります。その下に足の裏です。

大腿骨に乗るためには、つながるスネの骨に乗らなければなりません。スネの骨は2本ありますが、乗るのはもちろん、内側の太い方の骨です。外側の細い方では、体重を乗せるには頼りありません。太い骨のサポートぐらいに考えておいてください。





下の図の◯印は、足の裏から見たスネの太い骨の場所です。この場所に体重を乗せてください。肩幅くらいに足を広げるとわかりやすくなります。

そうするとスネの太い骨に乗って、大腿骨に乗って、膝立ちと同じような状態になります。少し内側に絞るイメージになります。





足の裏は地面に触れている面積が広いので、膝立ちのように一点では支えられません。スネの太い骨を中心にして、広範囲で支えるようなイメージになります。

この時に、スネの太い骨に乗る意識を強くもってください。



スネの太い骨に乗れたら、今度は全身の力を抜きます。

そして自分の背筋を意識してください。スッと楽に、自然に伸びていれば成功です。無理に胸をはって、背筋を強引に伸ばすのとは違います。背筋自体には、まったく力を入れていません。

これが本当の「良い姿勢」です。

おそらくあなたは今まで、こんなにも脱力して立った記憶がないと思います。上手に骨格で身体を支えてあげると、立っている姿勢とは、ここまで楽なものです。立ったまま休んで、疲れた身体も癒せるほどです。



ねこ背になる、本当の原因


ねこ背になる本当の原因は、正しく骨に乗れていないからです。

足の裏は広いので、つま先から踵まで、好きなところに体重をかけられます。体重をかける場所を、スネの太い骨から外すと姿勢が崩れてしまいます。

ねこ背は「結果」ではありません。足の裏の間違った重心のせいで、倒れそうになる身体を修正する「手段」です。手段を矯正して治そうとしても、うまくいくはずがありません。無理に良い姿勢に見えるものをつくって、身体に辛い思いをさせるだけです。表面だけを追ってしまうと、このゆに間違いに間違いを重ねてしまいます。



ねこ背になってしまう原因として、足の裏の重心の場所は、あまりに小さ過ぎるものです。ほとんどの人から見過ごされてきたのも仕方ありません。

ねこ背は、原因と症状が同じものと考えられてきました。それが常識でした。先ほども申し上げた「ねこ背だから、ねこ背になってしまう」という理屈です。



正しく座る


では、座っている状態では、どのように考えればよいのでしょうか?

大腿骨の下がスネの太い骨ですから、上は骨盤です。骨盤にきれいに乗るのが、座っている場合の正解です。

骨盤には「坐骨(ざこつ)」という骨があります。椅子に座ったときに、下に当たる骨です。





坐骨の角度をみてください。

前が狭く、後ろが広くなっています。これには意味がちゃんとあります。もし坐骨が真っ直ぐに平行だったら、安定が悪くて仕方ありません。左右にグラグラとして、落ち着いて座れません。改めて人間の身体は機能的にできていると感心します。

骨盤にきれいに乗るためには、うまく坐骨を活かします。坐骨を外すと、身体は極端に不安定になります。不安定な身体のバランスをとるためには、やはり姿勢を悪くするしかありません。

基本的な理屈は、立っているときの場合とすべて同じです。坐骨を外して前に体重をかければ、ねこ背になります。外すのが後ろなら仰け反ってしまいます。



正座やあぐらでも、理屈は同じです。正座の場合には坐骨の下に自分の足があります。坐骨をきれいに足に乗せられるように調整して、力を抜いてください。

背筋がスッと伸びると、椅子に座ってやる作業が楽になります。正しい座り姿勢では、骨格が体重を効率よく支え、筋肉の負担は最小限に抑えられます。長時間の作業も楽になります。

パソコンのキーボード操作でも、首や肩の負担は減り、キーボード操作も軽快になります。目からきていると思っていた首と肩のこりは、じつは姿勢のせいだったということもあるかもしれません。



正しい姿勢とは、骨格にうまく体重を預けて、リラックスしている状態です。力が抜けているので、必要な筋肉がすばやく反応できます。

なんだか武道の真髄のような話ですが、実際の日常生活にも通じるものがあります。



原因の最初から正さないと、満足な結果はでません。

スネの太い骨に体重を乗せる。坐骨に乗る。たったこれだけのことで、手強かったねこ背は自動的に正されます。真相は意外なほどにシンプルです。

あなたがこの事実を伝える発信源になって、ぜひ一般常識を変えてしまってください。

1. 膝立ちから説明して

2. スネの太い骨に乗る、

3. 坐骨に乗る

という順番だと、伝わりやすいです。








出典:小池義孝『ねこ背は治る!』




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