2016年3月7日月曜日

予期せぬ偶然 [石川直樹]


話:石川直樹





写真の面白いところは、予期せぬ偶然が写りこむこと

ぼくは撮影に向かう際、漠然を行き先を決めることはあっても、撮りたい写真のイメージを事前に固めることはありません。なぜなら、狙ったものを思い通りに撮れたときほどつまらないものはなくて、撮る前に意図していた通りになんて絶対撮りたくない。

自分が気づかなかったものまで写り込むからこそ、写真は面白いと思っていますし、予想とは違うものに出会うから旅は楽しいわけです。





旅をするとき、ぼくは常に出会いがしらの偶然を大事にしています。

風景を目の前にして、何かを待ったりせず、演出したりせず、何かと出会って、自分の体が反応した風景をそのまま撮る。

雨が降っていれば雨の風景を撮り、曇っていたら曇りの風景を撮り、たまたま晴れていたら晴れの風景を撮る。天候待ちなんてしません。

自分の主観で目の前の世界をねじ曲げたくないんです。

だから、意識的にフレーミングするというよりは、反応だけでシャッターを切る。ただ、そこにあるものをそのまま撮る。それは案外難しいことでもあって、でもそうした撮り方がぼくの写真の根底にあるんだと思います。









引用:CANON PHOTO CIRCLE 12月号
石川直樹「Encounter Nature 日本の風土」




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