「正義をふりかざす人ほど、困った人はいない…」
そんなつぶやきが、被災地から漏れ聞こえてきた。
「一方的に放射能の恐怖などを声高に叫ばれても…」
正義を口走った時に生まれるのは、調和ではなかった。
「分裂」しか生み出さない…。
「だから、正義、正義とわめかないでほしい…」
それが正直、被災地の方々の本音だった。
詩人・田村隆一は、「木」という詩に、こんなフレーズを詠んでいる。
「木は愛とか正義とか、わめかないから好きだ」
太平洋を隔てた「正義の国」アメリカでは、弁護士ブライアン・スティーブンソンが、似たようなことをTEDの講演で訴えていた。
「この世界の大半で、貧困の対極にあるのは富ではありません。むしろ『正義』なのです」
この正義の国は、13歳の少年を死ぬまで牢屋に入れておくことのできる、世界で唯一の国。そして、殺人の被害者が黒人ではなく白人だと、11倍も死刑になる可能性が高まり、もし殺したのが黒人で、殺されたのが白人ならば、その確率は22倍にまで跳ね上がる。
「もし、その正義が分裂を生むだけならば、そんな正義は犬にでも食わせてしまえ」
そんな言葉も言いたくなろう。
先の詩人・田村隆一は、「ほんとうに木はわめかないのか?」と自問する。そして、こう答える。
「木は愛そのものだ。それでなかったら、小鳥が飛んできて、枝にとまるはずがない」
「正義そのものだ。それでなかったら、地下水を根から吸い上げて、空にかえすはずがない」
出典:致知2013年3月号
「人生を照らす言葉 鈴木秀子」
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