〜話:小林秀雄〜
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先日、ハドソンの「
ラ・プラタの博物学者」を読んでいたから、死を装う本能について狐のことが書いてあって、思わず吹き出した。
狐は危険が迫ると死んだ振りをする。時々うす眼を開けてもう大丈夫かどうか確かめる。大丈夫と見定めるとそろそろ立ち上がって逃げ出す。ところが、こいつがうまく行かない場合があるそうだ。狐の術策は極めて巧妙で犬などは完全に欺されるそうだが、あんまり巧妙すぎて本当に死んで了うという場合があるので、或る男が実験をしたら胴体を切断して了うまで死んだ振りをしていたという。
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ソース:小林秀雄「
栗の樹」
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