2015年11月19日木曜日
速水御舟、迷いなき境地 『炎舞』
〜NHK日曜美術館
「どんどん破壊せねばならない 日本画家・速水御舟」より〜
…
そのころ御舟(ぎょしゅう)は、写実一辺倒だった画風に行き詰まりを感じていました。
速水御舟(はやみ・ぎょしゅう)
「自然に直面した写実のみになってきた。けれども、何かそれだけでは済まない問題が常に往来している。この無味乾燥を打破して、本当の何ものかをつかみ出さなければならない悩みを背負っているような気がする」
御舟は武蔵野にある禅寺、平林寺(埼玉・新座市)の門をたたきます。
座禅をくみ、日中は堂内の掃除にはげむ毎日。
御舟は修行僧とおなじ生活を9ヶ月間おくり、心の目でものを見るという禅の教えに近づこうとしました。
大正14年夏、避暑におとずれた軽井沢で御舟は、焚き火と、それに群がる蛾(が)の美しさに心奪われました。
毎日、家族のものに焚き火をおこさせ、御舟はその前で写生をくりかえし行い、炎を見つめつづけました。
『炎舞』大正14年(山種美術館蔵)
変幻する炎の神秘が、深みのある朱で描かれています。
闇と炎の境には、金泥をもちいて微妙な色調の変化が加えられています。
我が身を焦がしながら舞う蛾の群れは、妖しい輝きをはなっています。
御舟は弟子に、
「絵をつくる前に、人間をつくれ。人間のできていないものに、いい絵はかけるはずがない」
と言ったといわれています。
『炎舞』は御舟が31歳の若さで到達した境地をあらわしています。
村上隆
「この『炎舞』の蛾のスケッチを見たことがあるんですけど、けっこう相当やってるんですよね。そういう自分の画力に対する自信と、自分の心の中を見つめたという自信が合体して、迷いがないですよね。… これはもう、ぜんぜん迷いがなくて、自分の人生の哲学と、絵をかくという行為が見事に合体している瞬間だとおもうんですよ。そういう奇跡的な瞬間て、だんだんだんだん積み上げられるわけじゃなくて、やっぱり何年に一回とか、一生に一回か二回しかないかもしれないぐらいの、奇跡的な出会いの瞬間だと思うんですよね」
「まだ31歳だったんですよね、この奇跡がおきたときは」
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引用:NHK日曜美術館
「どんどん破壊せねばならない 日本画家・速水御舟」
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