片目
One eye
私の母は片目しかありませんでした。
My mom only had one eye.
彼女に両目があったときのことを私は覚えていません。」
I don't remember a time when she had two eyes.
まだ小さかったころ、私は母の眼球のない目におびえていました。
When I was little, her missing eye frightened me.
母と一緒のところを見られると、私は隠れようとしたものでした。
When people saw us together, I tried to hide.
母のことは愛していたし大事に思っていたのですが、片目のない母が恥ずかしかったのです。
I did love her and care about her, but I was ashamed of her because of it.
ある日、私たちがショッピングモールにいると、クラスメート数人にばったり会いました。
One day we were at the mall and ran into some of my classmates.
彼らは母を指さして笑いました。
They pointed at her and laughed.
翌日、学校でそのうちの一人が、「お前の母さんは片目しかない!」と言って、
The next day at school, one of them said, "Your mom only has one eye!"
みんなでまた笑いました。
Then they all laughed again.
私は消えてしまいたいと思いました。
I wanted to disappear.
家に帰ってから、私は母に学校であったことを話しました。
When I got home, I told my mom what had happened at school.
私は言いました。
I said,
「僕はすごく恥ずかしい。
"I'm so ashamed.
もうお母さんとは一緒に出かけたくない」
I don't want to go out with you anymore."
そんなことを言って申し訳なく思いましたが、学校でほかの子どもたちに笑われるのが嫌でたまらなかったのです。
I felt bad about saying that but I hated the other kids at school laughing at me.
私は母の気持ちは無視していました。
I ignored my mom's feelings.
私は家を出て、母と関わりを持たないようにしたいと思っていました。
I wanted to leave home, and have nothing to do with her.
だから私は一生懸命勉強し、海外に留学するチャンスを得ました。
So I studied very hard and got a chance to study abroad.
時は過ぎ、私は結婚しました。
Time passed and I got married.
自分の家も買いました。
I bought a house of my own.
自分の子どもも生まれました。
I had kids of my own.
私は自分の人生や子どもたち、それに快適な暮らしに満足していました。
I was happy with my life, my kids and my comforts.
ある日突然、母が私を訪ねてきました。
Suddenly one day, my mom came to visit me.
彼女は何年も私に会っていませんでしたし、孫の顔を見たことがありませんでした。
She hadn't seen me in years and she hadn't met her grandchildren.
母が玄関先に立ったとき、子どもたいは母を見てショックを受けました。
When she stood by the door, my children looked at her and were shocked.
娘は泣き出しました。
My daughter started to cry.
それから、私の母と面識のなかった妻が玄関に出ました。
Then my wife, who had never met my mother, went to the door.
彼女は言いました。
She said,
「あなた誰?
"Who are you?
何の用?」
What do you want?"
これに対して母は静かに答えました。
To this, my mother quietly answered,
「まあ、ごめんなさい。
"Oh, I'm sorry.
住所を間違えたようだわ」
I must have the wrong address."
私は窓から見ながら、ただ立ちつくしていました。
I just stood watching from the window.
母は私を見たと思いますが、私がそのまま動かずにいると、
I think she saw me but when I stayed where I was,
母はぐるっと向きを変えて言ってしまいました。
my mother turned around and left.
私は母に申し訳なく思いましたが、妻に私に「玄関にいた女の人を見たことがあるか」と聞いたとき、
I felt sorry for her, but when my wife asked if I had seen the woman at the door,
「ない」と答えました。
I said no.
それから数年が過ぎました。
A few years passed.
ある日、昔のクラスメートとの集まりの案内が届きました。
One day, I got a letter about a meeting of my old classmates.
私はいつも妻に、「故郷には良い思い出がないので、二度と帰りたくない」と言っていました。
I had always told my wife that I never wanted to return to my hometown because I didn't have any good memories of it.
しかし、なぜかその集まりには行きたい気がして、妻には「出張に行く」とウソをつきました。
But somehow I wanted to go to the meeting, so I lied to my wife, saying that I was going on a business trip.
集まりの後、私はむかし住んでいた家をちょっと見に行きました。
After the meeting, I went to our old house just to see it.
近所の人は「母は亡くなった」と言いました。
My neighbors said that my mother had died.
彼らは、母が私に届けたかった手紙を手渡してくれました。
They handed me a letter that she had wanted me to have.
それを読んで、私はどうしようもない気持ちになりました。
After I read it, I felt terrible.
もう大人であるにも関わらず、私は泣きに泣きました。
Although I am a grown man, I cried and cried.
最愛の息子へ
My dearest son,
あなたのことをいつも思っています。
I think of you all the time.
数年前、あなたの家に行って子どもたちを驚かせてしまってごめんなさいね。
I'm sorry that I came to your house and frightened your children a few years ago.
最近、あなたの昔のクラスメート、トビー・アダムス君に会ったのですが、
I saw one of your old classmates recently, Toby Adams,
あなたの名前が同窓会の出席者リストに載っていると言っていました。
and he said he saw your name on the list of people who would be attending your school meeting.
あなたが同窓会に来ると聞いて、すごくうれしかったのよ。
I was so glad when I heard you were coming for the school meeting.
でも私は具合いがあまり良くないので、ベッドから出てあなたに会いに行くことはできないかもしれません。
But I'm not too well and I may not be able to get out of bed to see you.
あなたが子どもころ、いつもお母さんのことで恥ずかしい思いをさせてごめんなさい。
I'm sorry that I always made you feel ashamed when you were growing up.
あのね、あなたがまだとても小さかったころ、
You see, when you were very little,
あなたは事故に遭って片目を失ったの。
you had an accident and lost an eye.
母親として、あなたが片目だけで大きくならなければいけないのを見るのは耐えられなかった。
As a mother, I couldn't stand watching you having to grow up with one eye.
だから私の目を一つあげたのよ。
So I gave you one of mine.
息子が人に笑われないで成長できるのがすごくうれしかったの。
I was so pleased that my son wouldn't have to grow up with people laughing at him.
あなたがその目で私の代わりに世界を見ることができるのもうれしかったわ。
I was also pleased that he would be able to see the world for me with that eye.
ありったけの愛をこめて
With all my love to you,
あなたの母より
Your mother
出典:英語で泣けるちょっといい話
0 件のコメント:
コメントを投稿