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2018年5月1日火曜日

π/4(よんぶんのパイ)の法則【小宮山宏】


話:小宮山宏




東大図書館では、図書の購買を効率化しようと、集中購入システムを導入した。

その結果、大学は人手が省ける。本屋さんも、これまで多数の研究室を相手にしていたのが、集中管理室とだけ決済を行えばよくなるから、値引きすることができるわけだ。

しかし、たったこれだけのことでも、大きな組織の中で実行に移すのは大変なことだ。うまくやるコツは、全部を集中化するなどと考えず、80%くらいを狙うことだ。

教員の中には、古文書など特殊な本を特殊な本屋さんから買っているなど、さまざまな事情がある。また、理由はよく分からないが、なぜか反対していて説得するのがとても疲れるといった人も組織には必ずいるものだ。

そういうところを除いてスタートし、やがて入ってくるのを待つ。つまり、こっちの水は甘いよと見せるのである。


正方形とそれに内接する円の面積の比がπ/4であって、約0.8である。正方形を対象にしても、実行には円の面積あたりが狙い所である。これが、π/4(よんぶんのパイ)の法則である。






From:
『知識の構造化』
小宮山宏

2018年4月29日日曜日

知識の構造化とは?【小宮山宏】


話:小宮山宏




個別の研究内容を収集し関連づけることによって、新しい知識を生成する仮想例を紹介しよう。スティーブン・クレインス東大助教授の作である。


「アリスは、米国の自動車会社で燃料電池のLCA(ライフ サイクル アナリシス)の仕事をしていたが、その実用化はまだまだ先のことだと発表した。

アントンは、北海道大学の触媒研究者で、高活性な酸化触媒を発見したが、共同研究先の化学企業では用途が見つからなかった。

スーザンは、MITの薄膜研究者で、高密度膜の生成が目的であるが、実験では多孔性膜が生成されて困っていた。

ジョージは、ケンブリッジ大学の流体力学の研究者で、最近細い管に低抵抗で液体を流す機構を見い出した。


上記の研究は相互に何も関連がなく、お互いに相手の研究結果を自分の研究と関連づけることはなかった。

これらの研究に対して、東京大学のスティーブンは、アントンの触媒をスーザンの方法で加工した。それから、ジョージの流路を熱除去に適用することに思い至り、アリスのLCAを適用してみたところ、燃料電池の性能はケタ違いに改良され実用可能であることを発見した。

その新知識をベースに起業した。

現在、燃料電池自動車が環境問題に大いなる寄与をする時代がくると期待されている」


上記は、知識の収集と統合による問題解決の例である。適切な知識を適切に動員することは、複雑な問題解決の鍵である。しかし、単に知識を収集して統合すれば新知識が生成される訳ではない。

ここで利用される思想と方法論が、知識の構造化である。知識を構造化して問題解決に成功した例は、さまざまな分野で報告されはじめている。知識の構造化が、大学のアカデミックな問題から産業界の現実的な問題まで幅広く適用されるようになるであろう。






From:
『知識の構造化』
小宮山宏 著

2018年4月25日水曜日

マニアの理解の仕方は「知識の構造化」である【小宮山宏】


話:小宮山宏




人工物の機能は向上したが、機能のすべてを利用するのは実は大変難しいことである。それどころか、携帯電話機やコピー機やテレビ用のリモコンなど、私は2つか3つのキーしか使わない。

そもそも、搭載してある機能すべてを利用できる人などいるのだろうか?

それがいるのだ。人工物の複雑な機能を自由に使える人を「マニア」と呼ぶ。マニアは、複雑な人工物を幾つかの原理に分解し、原理間の相互関係を理解するという方法で、その構造を把握しているのである。

その結果、マニアは、初めて手にする最新の携帯電話機でも数分でその構造を完全に理解できる。マニアの理解の仕方は「知識の構造化」であり、人類の希望だ。





引用:
知識の構造化
2004/12/24
小宮山 宏

2014年5月1日木曜日

維新から100年にして先進国 [小宮山宏]


話:小宮山宏


 日本は江戸時代の間、鎖国をしました。その間に産業技術において遅れをとったわけです。ペリーが黒船でやってきて、その黒船と自分たちの船との大きさの差、それはもうまさに国力の差であって、日本は植民地化するのではないかという国の存亡の危機を感じたわけです。

 アジアのほとんどの国が植民地化する中で、日本はそうした危険を乗り越えて、何度かの戦争を経つつも先進国になったわけです。いつなったかと言うと、ちょうどこれは偶然なのですが、1868年に明治維新、それから100年経った1968年に、日本のGDP、国内総生産というのが世界の第2位になったのです。アメリカ以外のすべての国をぬいて第2位に立ったのです。

 江戸時代の間に日本が負けたというのは、決して文化で負けたわけではなくて、産業技術で負けたということですから。文化というのは、例えば食べ物、寿司、天ぷらといったようなものは今でも世界一おいしいわけですし、美術で浮世絵などというものがなかったら、後期印象派というのは成立しえなかった。ゴッホなどはたくさん日本の浮世絵を模写しているというぐらい、文化的にもすぐれていたわけです。

 茶道、生け花といったようなものも、本当に精神性の高い文化を作ってきた。負けていたのは産業技術だったわけです。ところが、その産業技術で1968年に完全に追いついたのです。このとき日本は先進国になったわけです。







出典:10ミニッツTVオピニオン
小宮山宏『課題先進国としての日本』