話:小宮山宏
日本は江戸時代の間、鎖国をしました。その間に産業技術において遅れをとったわけです。ペリーが黒船でやってきて、その黒船と自分たちの船との大きさの差、それはもうまさに国力の差であって、日本は植民地化するのではないかという国の存亡の危機を感じたわけです。
アジアのほとんどの国が植民地化する中で、日本はそうした危険を乗り越えて、何度かの戦争を経つつも先進国になったわけです。いつなったかと言うと、ちょうどこれは偶然なのですが、1868年に明治維新、それから100年経った1968年に、日本のGDP、国内総生産というのが世界の第2位になったのです。アメリカ以外のすべての国をぬいて第2位に立ったのです。
江戸時代の間に日本が負けたというのは、決して文化で負けたわけではなくて、産業技術で負けたということですから。文化というのは、例えば食べ物、寿司、天ぷらといったようなものは今でも世界一おいしいわけですし、美術で浮世絵などというものがなかったら、後期印象派というのは成立しえなかった。ゴッホなどはたくさん日本の浮世絵を模写しているというぐらい、文化的にもすぐれていたわけです。
茶道、生け花といったようなものも、本当に精神性の高い文化を作ってきた。負けていたのは産業技術だったわけです。ところが、その産業技術で1968年に完全に追いついたのです。このとき日本は先進国になったわけです。
…
出典:10ミニッツTVオピニオン
小宮山宏『課題先進国としての日本』
0 件のコメント:
コメントを投稿