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2018年5月16日水曜日

認知症は『アロマ』で予防できますか?


From:
週刊東洋経済 2016年10/8号



浦上克哉
『認知症予防のQ&A』






認知症予防に、アロマは効果があるのですか?


認知症では、物忘れがはじまるよりも先に、匂いがわからなくなる症状がよくみられる。

アルツハイマー型認知症の原因物質の一つに、アミロイドβタンパクが脳にたまると、まず嗅神経がダメージをうける。そのダメージが、隣接している「海馬」(脳のなかで記憶をつかさどる部位)にも広がり、記憶障害が起こると考えられている。

嗅神経には「適度な刺激を与えると再生する」という、とてつもない能力がある。だから嗅覚をはたらかせるほど脳が活性化する。アロマセラピーが有効なのはこのためだ。





私たちの研究では、介護老人保健施設で軽度から中等度のアルツハイマー型認知症の人をふくむ77人にアロマをもちいた調査を実施し、多くの人に認知機能の改善効果がみられた。

高齢になると、メラトニンというホルモンの分泌が減り、眠りが浅くなる。そして本来は睡眠中に分解されるアミロイドβタンパクが溜まりやすくなる。これを防ぐには、昼間は活動的に過ごし、夜はゆっくり休んで、生活のリズムを整えることが大事だ。

私たちの研究グループは、アロマオイルの使い分けで生活にメリハリをつけ、いい睡眠につなげる方法を提唱している。



昼間用のオイルは、集中力や記憶力を向上させ、交感神経を刺激するブレンドにしている。ローズマリー・カンファーとレモンの組み合わせがベスト。日中はアロマペンダントやシート(パッチ)をもちいて連続使用する。

夜間は、副交感神経を刺激し、リラックスしてぐっすり眠れるよう、真正ラベンダーとスイートオレンジの組み合わせがよい。就寝の一時間もど前から、芳香器をもちいて寝室全体に香りをひろげる。

本来、メラトニンの分泌をうながすには、昼間に日光をあびるのが理想的。しかし外出がままならない高齢者もいるだろうから、手軽に利用できる点でアロマは有用なツールである。





何歳ごろから予防を考えるべきでしょうか?


認知症の発症は、大部分が65歳をすぎてから。ところが認知症の6~7割をしめるアルツハイマー型において、アミロイドβタンパクが溜まりはじめるのは、発症の20~30年前だとわかってきた。

逆算すると、40~50代の段階から積極的に予防に取り組めば、認知症になる人をもっと減らせるようになり、発症の時期をさらに遅らせることができると私は考えている。

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From:
週刊東洋経済 2016年10/8号


「楽をしたければ『直後に思い出せ』これが記憶の鉄則である」


From:
週刊東洋経済 2016年10/8号




篠原菊紀
『効率的な記憶術 7つのワザ』


ポイント1
覚えようとせずに、直後の思い出す


記憶には、

①覚える=記銘
②覚えておく=保持
③思い出す=想起

の3つの段階がある。3つは本来は別々の働きで、脳のなかで働く部位も違っている。しかし、記憶の神経ネットワークとしては一体化して働いている。記憶するとは、このつながりを強固にすることである。神経ネットワークの部分部分だけをつくることはできないのだ。

だから、何かを覚えたいのならば、一方通行でやみくもに詰め込もうとせず、いったん情報を入力したら「思い出す(想起する)」ところまでしておくことが肝要だ。


米ワシントン大学の研究グループが実施したこんな実験がある。

2つのグループに「およそ250の単語からなる文章を記憶する課題」を与えた。片方のグループは7分間記憶し、さらにもう7分間を記憶する時間にあてた。もう一方は、7分間記憶し、7分間を覚えた文章をできるだけ「書き出す」ことにあてた。それから両グループに確認テストをした。

作業直後である5分後には、「記憶、さらに記憶」のグループのほうが成績がよかった。ところが2日後は「記憶して書き出す」のグループのほうが良好な成績だった。これは1週間後でも同じだった。


脳は、インプットよりもアウトプットを重視する。「出力依存性」をもつ。

記憶に深く関係する海馬は、思い出したり、使ったりすると、それが自分にとって大事なことだと判断するようで、それだけしっかり覚えようとしてくれる。

資格試験の試験勉強でも、単に読んで、蛍光マーカーをひくよりも、読んだ直後に目をつぶって思い出してみたほうが、長く頭のなかに定着する。受験勉強ならば、チェックテストを多用したり、誰かに説明したりすることだ。記憶を引き出すことが効果をうむ。

楽をしたければ、直後に思い出せ。これが記憶の鉄則である。






ポイント2
覚えようとせず、すぐに使う

効率よく記憶するためには、「直後に思い出す」とならんで「直後に使う」ことが大事である。

2011年にサイエンス誌に掲載された有名な論文がある。

短い科学論文を、大学生200人に5分間、読んでもらった。その後、大学生を4つのグループに分け、

「読んだ後に何もしない」
「10分間、何度も繰り返し読む」
「10分間で内容をまとめるコンセプトマップをつくる」
「10分間で読んだ内容に関する自由なエッセーを書く」

を課した。

1週間後にどれだけ記憶しているかのテストをしたが、その前に記憶に対する自信をたずねた。被験者には「すごく自信がある」から「まったく自信がない」まで、自信の度合いを回答してもらった。

「何度も繰り返し読んだグループ」が最も高い自信を示す一方で、「エッセーを書いたグループ」は自信が最も低かった。

結果が興味深い。論文の中身をたずねる質問でも、そこに書かれたことから類推しうる事項をたずねる関連質問でも、成績が最も良かったのは「エッセーを書いたグループ」だった。

エッセーを書くことは、読んだ内容を思い出しながら、それを組み合わせてアウトプットしようとする行為だ。この実験からは、直後に思い出すだけでなく、直後に思い出しつつ使うと、「記銘、保持、想起」のネットワークが強化されることがわかった。

想起(再生)することと、「使う・組み合わせて答えを考える」ことで記憶は強固になる。なにもエッセーを書く必要はない。箇条書きのような短い文章をいくつか書くだけで効果がある。

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From:
週刊東洋経済 2016年10/8号

2018年5月15日火曜日

AIには出来ない、人間らしさ最後の砦とは?


From:
週刊東洋経済 2016年10/8号




池谷裕二
『人工知能と人間の脳との境界が揺らいでいる』


――人間の創造性を、AI(人工知能)がまねるのは難しいのでは?


たとえば私たちが絵を描き、作曲するという創造的な活動は、人間にしかできないと考えてきた。しかし今では、人工知能に「シェイクスピアのような詩を書いてくれ」と命じれば、専門家でさえ本物かどうか見分けがつかないような高いレベルの詩が書けるようになっている。

今年にはいり米国マサチューセッツ工科大学が、最近の人工知能の創造性について「人間のクリエイティビティに疑問を呈する」とレビューを書いています。創造性とは脳で考えるものですが、脳の作用なんて電気化学反応でしかない。ならば人工知能が芸術を生んでもおかしくない。

マイクロソフトが人工知能に描かせたレンブラントの絵を見ると、相当なプロでも真作と見分けがつかない。でも人工知能は真似よりも創造的なことが得意で、アニメのようなパステル画にレンブラントを描き直すこともできる。こうなるとクリエイティブですよね。

バリエーションやコンビネーションを駆使し、これまで芸術家たちが手掛けてこなかった独創性の高い音楽や絵画や詩をつくることも人工知能なら可能。ただし人間の感性の幅は狭いので、人工知能による独創的な作品を受け入れられるかどうかは別ですが…。


――人間にしかできないことはなくなりますか?


ありますよ。うじうじしたり、イライラしたり、カッとなったりする感情です。こうした感情を人工知能にもたせることは可能ですが、不要なのできっとプログラミングされませんよね。

それが人間らしさの最後の砦になるかもしません。

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From:
週刊東洋経済 2016年10/8号

「つまりネズミは、過去―現在―未来を認識しながら、移動しているのです」


From:
週刊東洋経済 2016年10/8号




藤澤茂義
『記憶の司令塔、海馬を解明する』


過去、現在、未来をネズミは認識している


ではエピソード記憶は海馬において、具体的にどのように形成されているのでしょうか。海馬研究の歴史のなかでも重要なものの一つに、2014年ノーベル生理学・医学賞を受賞したジョン・オキーフ、エドヴァルト・モーザー、マイブリット・モーザーによるネズミを用いた空間認識に関する研究があります。

オキーフたちは、ネズミの脳内には空間認識をつかさどる部位があり、それはきっと海馬だろうという仮説を立てました。海馬には視覚や触覚、味覚、聴覚などの情報が感覚野から集められているため、これらを海馬で統合し空間認識をおこなっているのだろうと考えたのです。

そこでネズミの海馬に極小電極を埋め込んだうえで、四角い箱に入れて自由に走り回らせ、海馬のニューロン(神経細胞)の活動の様子を観察しました。

すると、箱の中で左上に来たときには、海馬のニューロンのなかでも、ある一つのニューロンが発火(興奮)し、右下に来たときにはまた別のニューロンが発火するというように、移動する場所によって、発火するニューロンが異なることがわかりました。

オキーフたちは、特定の場所にいるときに反応するニューロンのことを「場所細胞」と名付けました。つまり海馬の場所細胞によって、マウスは自分が空間のどの位置にいるかを認識しているわけです。

さらに彼らは、「場所細胞の位相前進」という面白い現象を発見します。ネズミが箱の中を場所1、場所2、場所3とどんどん移動していくと、その都度、場所細胞1や2や3が発火します。場所細胞の発火は1回で終わらず、その後もある一定の間隔で発火しつづけるのですが、そのタイミングが少しずつ前へとずれていきます。

すると場所2に来たときは、0.1秒の短い時間で、まず場所細胞1が発火し、つぎに場所細胞2、そしてこれから向かおうとしている場所細胞3の順番で発火します。自分がどこから来て、今どこにいて、これからどこへ行こうとしているかについての情報が、海馬において短い時間のなかに圧縮して表現されているわけです。

つまりネズミは、過去―現在―未来を認識しながら、移動していると考えられます。

画像:週刊東洋経済 2016年10/8号


休んでいるときも場所細胞が発火


オキーフたちによる場所細胞や、場所細胞の位相前進の発見の後、今度は米国のデイビッド・フォスターという研究者が、ネズミが箱の中を走り回るのをやめて体を休めているときも、場所細胞の発火が再生されているのを見つけました。

しかもこのときには、場所細胞5→4→3→2→1というように、逆の順番で、時間的に圧縮されて再生されていることがわかりました。

これはネズミが箱の中を走り回った経路を思い出し、覚えようとしているということだと推測されます。エピソード記憶は海馬のなかで、こうやって形成されているわけです。これは人間もほぼ同じであると考えられています。

興味深いのは、場所細胞の圧縮再生の活動は、睡眠中にも見られることです。記憶の定着にとって、睡眠は非常に大切であるということです。エピソード記憶はマウスよりも犬や猫、チンパンジーや人間というように、脳の進化につれて、より高次かつ複雑な記憶を形成し、維持することが可能になっていきます。

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From:
週刊東洋経済 2016年10/8号



藤澤茂義
『記憶の司令塔、海馬を解明する』