From:
週刊東洋経済 2016年10/8号
浦上克哉
『認知症予防のQ&A』
認知症予防に、アロマは効果があるのですか?
認知症では、物忘れがはじまるよりも先に、匂いがわからなくなる症状がよくみられる。
アルツハイマー型認知症の原因物質の一つに、アミロイドβタンパクが脳にたまると、まず嗅神経がダメージをうける。そのダメージが、隣接している「海馬」(脳のなかで記憶をつかさどる部位)にも広がり、記憶障害が起こると考えられている。
嗅神経には「適度な刺激を与えると再生する」という、とてつもない能力がある。だから嗅覚をはたらかせるほど脳が活性化する。アロマセラピーが有効なのはこのためだ。
私たちの研究では、介護老人保健施設で軽度から中等度のアルツハイマー型認知症の人をふくむ77人にアロマをもちいた調査を実施し、多くの人に認知機能の改善効果がみられた。
高齢になると、メラトニンというホルモンの分泌が減り、眠りが浅くなる。そして本来は睡眠中に分解されるアミロイドβタンパクが溜まりやすくなる。これを防ぐには、昼間は活動的に過ごし、夜はゆっくり休んで、生活のリズムを整えることが大事だ。
私たちの研究グループは、アロマオイルの使い分けで生活にメリハリをつけ、いい睡眠につなげる方法を提唱している。
昼間用のオイルは、集中力や記憶力を向上させ、交感神経を刺激するブレンドにしている。ローズマリー・カンファーとレモンの組み合わせがベスト。日中はアロマペンダントやシート(パッチ)をもちいて連続使用する。
夜間は、副交感神経を刺激し、リラックスしてぐっすり眠れるよう、真正ラベンダーとスイートオレンジの組み合わせがよい。就寝の一時間もど前から、芳香器をもちいて寝室全体に香りをひろげる。
本来、メラトニンの分泌をうながすには、昼間に日光をあびるのが理想的。しかし外出がままならない高齢者もいるだろうから、手軽に利用できる点でアロマは有用なツールである。
何歳ごろから予防を考えるべきでしょうか?
認知症の発症は、大部分が65歳をすぎてから。ところが認知症の6~7割をしめるアルツハイマー型において、アミロイドβタンパクが溜まりはじめるのは、発症の20~30年前だとわかってきた。
逆算すると、40~50代の段階から積極的に予防に取り組めば、認知症になる人をもっと減らせるようになり、発症の時期をさらに遅らせることができると私は考えている。
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週刊東洋経済 2016年10/8号
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