From:
週刊東洋経済 2016年10/8号
篠原菊紀
『効率的な記憶術 7つのワザ』
ポイント1
覚えようとせずに、直後の思い出す
記憶には、
①覚える=記銘
②覚えておく=保持
③思い出す=想起
の3つの段階がある。3つは本来は別々の働きで、脳のなかで働く部位も違っている。しかし、記憶の神経ネットワークとしては一体化して働いている。記憶するとは、このつながりを強固にすることである。神経ネットワークの部分部分だけをつくることはできないのだ。
だから、何かを覚えたいのならば、一方通行でやみくもに詰め込もうとせず、いったん情報を入力したら「思い出す(想起する)」ところまでしておくことが肝要だ。
米ワシントン大学の研究グループが実施したこんな実験がある。
2つのグループに「およそ250の単語からなる文章を記憶する課題」を与えた。片方のグループは7分間記憶し、さらにもう7分間を記憶する時間にあてた。もう一方は、7分間記憶し、7分間を覚えた文章をできるだけ「書き出す」ことにあてた。それから両グループに確認テストをした。
作業直後である5分後には、「記憶、さらに記憶」のグループのほうが成績がよかった。ところが2日後は「記憶して書き出す」のグループのほうが良好な成績だった。これは1週間後でも同じだった。
脳は、インプットよりもアウトプットを重視する。「出力依存性」をもつ。
記憶に深く関係する海馬は、思い出したり、使ったりすると、それが自分にとって大事なことだと判断するようで、それだけしっかり覚えようとしてくれる。
資格試験の試験勉強でも、単に読んで、蛍光マーカーをひくよりも、読んだ直後に目をつぶって思い出してみたほうが、長く頭のなかに定着する。受験勉強ならば、チェックテストを多用したり、誰かに説明したりすることだ。記憶を引き出すことが効果をうむ。
楽をしたければ、直後に思い出せ。これが記憶の鉄則である。
ポイント2
覚えようとせず、すぐに使う
効率よく記憶するためには、「直後に思い出す」とならんで「直後に使う」ことが大事である。
2011年にサイエンス誌に掲載された有名な論文がある。
短い科学論文を、大学生200人に5分間、読んでもらった。その後、大学生を4つのグループに分け、
「読んだ後に何もしない」
「10分間、何度も繰り返し読む」
「10分間で内容をまとめるコンセプトマップをつくる」
「10分間で読んだ内容に関する自由なエッセーを書く」
を課した。
1週間後にどれだけ記憶しているかのテストをしたが、その前に記憶に対する自信をたずねた。被験者には「すごく自信がある」から「まったく自信がない」まで、自信の度合いを回答してもらった。
「何度も繰り返し読んだグループ」が最も高い自信を示す一方で、「エッセーを書いたグループ」は自信が最も低かった。
結果が興味深い。論文の中身をたずねる質問でも、そこに書かれたことから類推しうる事項をたずねる関連質問でも、成績が最も良かったのは「エッセーを書いたグループ」だった。
エッセーを書くことは、読んだ内容を思い出しながら、それを組み合わせてアウトプットしようとする行為だ。この実験からは、直後に思い出すだけでなく、直後に思い出しつつ使うと、「記銘、保持、想起」のネットワークが強化されることがわかった。
想起(再生)することと、「使う・組み合わせて答えを考える」ことで記憶は強固になる。なにもエッセーを書く必要はない。箇条書きのような短い文章をいくつか書くだけで効果がある。
…
From:
週刊東洋経済 2016年10/8号
0 件のコメント:
コメントを投稿