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2014年3月3日月曜日

現場ありき [原丈人]


話:原丈人


 父から聞いた話ですが、労働争議が非常に激しかった昭和30年代、父は電力会社からエアコンの売り込みにあった際、本社ではなく、真っ先に”工場”に設置したそうです。その理由は、

「いちばん暑いところで働いているのは工員だ。本社の社員や役員は、扇風機があって涼しく仕事をしているのだから、エアコンなんかなくていい」

ということでした。私は、それを聞いたとき、「当然だ」と思ったのですが、その次に父が発した言葉がいまでも頭から離れません。

「工場を働きやすくすると、会社は儲かり、経営者にとっても社員にとっても幸せにつながる」と。

 父は発想が変わっていて、社用車にクーラーを設置するときも役員の社用車ではなく、トラックからクーラーを設置しはじめました。それも工場にクーラーを設置した理由と同じです。父は

「現場がいちばん欲しいことをするのが経営者だ」

ということをしきりに言っていました。

…




引用:原丈人『だれかを犠牲にする経済は、もういらない』


2013年11月12日火曜日

職人気質 [片野元彦]



話:永六輔


片野元彦さんという”藍の絞り染めの職人”さんがいました。

現役のパリパリで活躍していた頃なんですが、あるとき、料理屋で自分のつくった風呂敷が額縁に入れて飾られているのを見た。それで仕事をやめちゃったんです。

「これはきっと、オレのつくった風呂敷が物を包むためのものじゃなくて、”額縁に入れるのにふさわしいようなもの”になってしまったからだろう。オレの仕事がどこかで威張っていたとすれば恥ずかしい」

片野さんはそう思って、自分のつくったものからそういう嫌らしさが消えるまで、仕事をしないと言った人でした。



引用:永六輔『職人 (岩波新書) 』


2013年6月19日水曜日

仕事と家庭のバランス。男女の垣根を越えて



「lean in」という言葉は、「キャリア(仕事)に挑戦すること」を表す。

逆に「lean back」は、「仕事に挑戦しないこと」を意味する。



最近の女性は「lean in」を目指し、男性は「lean back」になっている。

そう話すのは、元外交官の女性「アン・マリー・スローター」さん(54歳)。

彼女を起用したのはヒラリー・クリントン国務長官(当時)であり、スローターさんは「女性初」の国務省政策企画本部長となった。



スローターさんは女性の国務長官の下で働いているにも関わらず、「自分が『結束の強い男性クラブ』にいる数少ない女性」であると感じたという。

「ワシントンは非常に『男性中心の場』です」と、スローターさんはため息をつく。

「トップが女性でも、その下層の人たちは非常に『男性中心のネットワーク』を構築しています。つまり、アメリカ政界はこうやって運営されているのです」



国務省で働いていた頃のスローターさんは、じつに多忙だった。

「夫や息子たちから離れ、週のうち5日間はワシントンに滞在しなくてはなりませんでした。時々、一回の出張で何週間も中東やアジア、ヨーロッパに行かなくてはなりません」

その2年間、「10代の息子2人のニーズを抱えて、職をこなすのは不可能だった」とスローターさんは言う。



フェイスブックの女性COO(最高執行責任者)である「シェリル・サンドバーグ」氏は、著書「Lean in」の中で、働く女性が家庭を犠牲にすることなく、出世する道のりを描いている。

しかし、スローターさんは「ワシントン(国務省)にいる時に私が直面した問題は、どれだけの野心があっても解決できないでしょう」と話す。



それでも、女性が「Lean in(キャリアに挑戦)」することに、スローターさんは賛同する。むしろ、スローターさんは「家庭では女性の方が優れている」という考えに納得できない。

「『専業主夫』になりたいという男性も大勢います」とスローターさんは言う。



実際、現在プリンストン大学で働くスローターさんは、夫であるモラフチークさんに14歳と16歳の二人の息子の世話をお願いすることも多いという。

かつてスローターさんがワシントンDC(国務省)にいた頃は、もっとずっと夫の子育てに頼っていたのである。夫・モラフチークさんは大学の教授であり、高級官僚よりはスケジュールが柔軟であった。

だが、世間の女性たちは「自分の子供をどのように面倒をみたらいいかを一番よく知っているのは自分だ」と思っている、とスローターさんは語る。



「lean in(キャリアに挑戦)」にしろ、「lean back(仕事から後退)」にしろ、それは男女の垣根で仕切るようなものではないのかもしれない。

少なくともスローターさんは、そう考えている。







(了)






ソース:The Wall Street Journal
「キャリア選択、女性だけでなく男性も全てを手に入れられない理由」

2013年5月24日金曜日

プロ野球選手が、野球を辞めたあとは…




昨シーズン、現役を引退したり、戦力外通告を受けたプロ野球選手の進路は、7割以上が野球に関係する職業だったことが、日本野球機構の調査で分かった。

調査対象になった選手は101人で、平均年齢は30.5歳。野球以外の一般企業などに就職した選手は8人にとどまり、進路が不明または未定の選手は16人。



現役引退や戦力外通告を受けた選手

101人(平均30.5歳)の進路先

野球に関する職業…77人
一般企業など…8人
進路不明・未定…16人






出典:NHKスポプラ


2013年4月2日火曜日

米仕事と花仕事。水戸岡鋭治



デザイナーの水戸岡鋭治(みとおか・えいじ)さんは、仕事には2つの種類があると言う。

「簡単に言うと『米仕事』と『花仕事』の2種類です」



経済性を求める、つまり稼ぐための仕事が「米仕事」。

文化や感性を大切にするのが「花仕事」。



「日本では経済重視の『米仕事』の人が圧倒的に多いんですが、私はできるだけ文化を持ち込んだ『花仕事』をしていきたいと考えているんです」と水戸岡さんは話す。

しかし、「花仕事」というのは、どうしても目先の利益が下がってしまう。



たとえば、水戸岡さんの手がける鉄道車両などで、床材をプラスチックにすれば低コストでメンテナスも容易になる。

「そこに木材を使おうとすると、高コストでメンテナンスが大変」

それでも敢えて木材を使おうとする理由は、そこに文化を持ち込みたいからだ、と水戸岡さんは言うのである。



というのも、たとえ目先の利益が下がろうとも、木材で魅力的なものを作っておけば、それに惹かれた人たちが「本当のファン」になってくれる。そして、それは結果的に長続きにつながっていく。

「経済性と文化性のバランスを保つようにしていくと、皆がそこそこ好むものが出来上がってきます。実際にそのバランスを追求することが、最終的に一番いい結果を生む可能性が高いのです」と水戸岡さんは語る。



米仕事と花仕事。

経済と文化。

その妙を水戸岡さんは問うのであった…。






出典:致知2013年5月号
「仕事の真髄・人生の妙味 水戸岡鋭治」

2012年10月22日月曜日

「美点凝視の経営」。障がい者とともに歩む


もし、社員の40%が「就労困難者」、つまり、知的障がい者、引きこもり、メンタル不全などを抱える人々であったのなら、その企業は成長できるであろうか?

渡邉幸義氏が代表を務める「アイエスエフネット」は10年以上にわたり、そうした人々とともに成長の道を歩み続けている。

障がい者とその両親、企業の三者が幸せに働くための秘訣とは?





2012年10月16日火曜日

ある床屋のオヤジ、叱り叱られ…。


ある床屋のオヤジは、経営の神様「松下幸之助」にこう言い放った。

「あなたは自分の顔を粗末にしている。これは商品を汚くしているのと同じことだ。散髪のために時間をつくる心掛けがなければ、とても大を成さない」と。



当時の松下氏は「容貌をほとんど気にせず、頭髪もぞんざいだった」というが、いきなりの初対面で、床屋のオヤジ「米倉近(よねくら・ちかし)」氏はこんなことを言ったのだ。

しかし、対する松下氏はさすがである。「誠にもっとも千万。至言なるかな」と、それ以来、その床屋「米倉」を贔屓にするようになったというのである。この米倉というのは銀座の中央通りにあったという、一流のお客を相手にする理髪店だった。



時が下り、今度はその床屋のオヤジがお客に叱られる番に…。

母の影響から、米倉氏は大変に厚く観音様を信仰しており、ある時、米倉氏は店を留守にしてまで観音様を拝みに行っていた。

折り悪く、米倉氏がいないときに床屋に来た一人のお客、大竹竹次郎氏(松竹)。主人の不在を知ると、後日改めて来店することに。



後日、米倉氏と面と向かうや、開口一番、「開店中に主人が留守とはどういうことか! お客様に不自由をさせて、ご利益などあろうものか!」と懇々と諭しはじめる。「客商売は、客が店の信者なのだ!」

すっかり我が身を恥じた床屋の主人・米倉氏。「確かに、お客様を差し置いて、いくら観音様を拝んでも、ご利益などあろうはずもない。自分の生業こそが信仰だった…」と思い至る。



その時の確信が、「業即信仰」とのことである。

「世の中にある無数の業(仕事)には、それ自体に良し悪しがあるわけではない。その行を行う者の人格いかんによって、それが決まるのだ。業を高めることこそが、そのまま自己を高めることにもなる」

以来、「毎日が開業日」を口癖としたという米倉氏。「店というのは古くなると惰性に流され、だらしなくなる。毎日を開業日のように新鮮な気持ちで場を清めなければならない」。



そんな理容「米倉」、今は四代目。あと数年で100周年とのことである。





出典:致知2012年11月号
「業即信仰 米倉満」