日曜美術館
アートシーンより
陶芸家
石黒宗麿
(いしぐろ・むねまろ)
1883 - 1968
昭和30年、濱田庄司らとともに最初の人間国宝に認定された陶芸家です。
漆黒に浮かぶ木の葉
『黒釉葉文茶碗』
1943ごろ
黒釉葉文茶碗 石黒宗麿 |
石黒の名を世に知らしめたのが、「木の葉天目」の再現でした。12世紀の中国でうまれたこの技法は、再現不可能とされていました。
しかし石黒は、試行錯誤をかさねるなか、焚き火の灰に「椋(むく)の葉」だけが原型をとどめていることを発見。幻の器をよみがえらせることに初めて成功したのです。
あくなき探究心は、石黒をさまざまな古陶磁の再現へと駆り立てます。
『白地鉄絵魚文扁壺』
1941ごろ
中国北宋時代の器のカケラを手がかりに、数年がかりで再現した作品です。純白におどる漆黒の魚。あざやかなコントラストをだすため、釉薬の微妙なバランスに苦心しました。
白地鉄絵魚文扁壺 石黒宗麿 |
渋谷区立松濤美術館 学芸員
大平奈緒子さん
「特定の師をもたなかった石黒宗麿にとっては、古陶磁というものが彼にとっての師であり、先人たちの技術を体得して、それをまた自身の作品の製作にいかし、つくりだしたというところに模倣の意義があったのかと思います」
やがて古陶磁にまなんだ技術を礎(いしずえ)に、自らの個性を開花させていきます。
『柿釉金彩鳥文鉢』
1966 - 67
柿釉の器にほとばしる奔放な線。藁(わら)を束ねた手製の筆でかいたものです。
柿釉金彩鳥文鉢 石黒宗麿 |
焼き物にむかう自らの境地を漢詩にしたためています。
十年一日徹異端
染泥葛衣綻且寒
白片残陶堆塁々
墻頭柿子紅珊々
異端の姿勢をつらぬき、
捨てた陶器の破片はつもるばかり。
だが、垣根のうえには熟した柿がかがやいているではないか。
彩瓷柿文壺 石黒宗麿 |
そして、傑作がうまれます。
『彩瓷柿文壺』
1959 - 61
吊るし柿がならぶ情景をえがいた器。
白、黒、オレンジ
発色する温度がそれぞれ異なる色を、絶妙な火のあつかいで見事に表現しています。卓越した技がうみだした、唯一無二の自在の境地です。
引用:日曜美術館アートシーン
最初の人間国宝「石黒宗麿のすべて」
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