中国のある村に旅籠があった。
旅人が通りかかると、その旅籠の煙突から火の粉が飛んでいるのを見た。
その先にはなんと薪(たきぎ)が積んである。
「火事になるといけない。煙突の向きを換えて(曲突)、薪を移しておいた方がいいよ(徙薪)」
その旅人は親切にも、旅籠の主に声をかける。ところが…。
「余計なお世話だ!」と怒った主は、茶の一杯も旅人に出さずに追い払う。
ところが、また別の旅人が旅籠を通りかかると、その旅籠は燃えていた。
髪を焦がし、額に火傷して懸命に消化協力した第二の旅人。
「ありがとうございます。ありがとうございます」
平身低頭、旅籠の主は第二の旅人を下にも置かぬ上客扱いで、豚を出し酒を出した。
その一部始終を見ていた近所の人たちは、主にこう言った。
「危険を忠告してくれた第一の旅人こそ、上客として遇するべきではないのか?」
その言葉に、主は大変に恥じ入ったとのことである。
以上、「曲突徙薪(きょくとつ・ししん)」の教え(漢書・霍光伝)。
災難は未然に防いでこそ…。
出典:致知2013年5月号
「安岡正篤師の曲突徙薪の教え 佐々淳行」
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