話:古猫
窮鼠かえって猫を噛むといふことあり。
追い詰められたネズミは、逆にネコを噛むということがある。
彼は必死に迫って恃(たの)むところなし。
そうしたネズミはまさに必死であり、誰かを頼りにするということがまるでない。
生を忘れ、慾を忘れ、勝負を必とせず、身を全うするの心なし。
もはや生きようとすることを忘れ、勝とうとも思わず、身を守ろうとすらしない。
ゆえにその志、金鉄のごとし。
だからこそ、その気概は金や鉄のごとく強靭である。
かくのごとき者は豈(あに)気勢をもって服するべけんや。
それほどの者を、どうして気の勢いだけで負かすことができようか。
引用:『猫の妙術』佚斎樗山
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