2016年11月9日水曜日

未来が過去に影響する[逆因果関係]



ある物理学者は、自由意志を可能にしているものは「量子力学のあいまいさ」であり、通常の因果関係に反して、未来が過去に影響をおよぼすこともあるのだと考えています。

モーガン・フリーマン
「ヒンズー教にカルマという概念があります。すべての行いは良いことであれ悪いことであれ、同じ強さで本人のもとに返ってくるというものです。原因と結果の倫理的な法則です。では、これが逆に働いたらどうなるでしょうか? 将来おこなうことが、過去に影響するとしたら…?」







この物理学者は量子力学を新たな見方でとらえようとしています。自由意志が宇宙の基本構造に組み込まれていると考えているのです。ケン・ウォートンは、サンノゼ州立大学の教授です。彼は、人間の日常のほとんどは自然界の基本原則で説明できるという考え方に惹かれてきました。

ケン・ウォートン
「子供の頃、よく両親が撮影したホーム・ムービーを見ました。見終わってフィルムを巻き戻すときも、映写機をつけたままにしていました。逆回しにするとすべてが滑稽に見えて、みんなで笑いました。でも、物理学者だった父はこう言いました。

『ケン、おまえが見ているものは、どっち向きに進んでいても、同じ物理法則にしたがっているんだよ』

まったく違っている見えるものが同じ物理法則にしたがっているとは、いったいどういう意味なのか、ずっと考えてきました」



物理学の法則は、人間の選択も予測できるものなのでしょうか? あるスタート地点から、あらかじめ定められたゴールまで、わたしたちを導く基本的な法則が存在するのでしょうか?

アインシュタインは存在すると考えました。相対性理論によれば、わたしたちはブロック宇宙というなかに住んでいます。そこでは、すべての時間と空間が一続きのフィルムのように配置され、過去・現在・未来が同時に存在しています。これは過去が未来に影響を与えるのと同様に、未来が過去に影響を与えることを意味する、とウォートンは考えています。

ケン・ウォートン
「未来は現在と相関関係があり、予測可能なものです。それを可能にするのが科学です。そうした予測をおこなっていくと、宇宙を散らばったカケラの集合体と見るよりも、一つの連続した構造物として見るほうが自然だとわかります」



ウォートンはこう考えています。量子力学的なレベルまで含め、あらゆる物事には明確なスタート地点とゴールがある。しかし、その中間には不確定性がある。

ケン・ウォートン
「これを説明するのが、逆因果関係です。わたしたちの未来における選択が不確定性を引き起こしているのです」

逆因果関係は、未来が過去に影響を与えることを意味します。出来事のはじめと終わりは決まっていても、その中間部分は量子力学によって融通がきくようになっています。そこに私たちの選択の自由がある、ということです。







ケン・ウォートン
「ニュートンが考えた時計のような宇宙空間では、最初の状態と物理法則によってすべてが決まってしまいます。その後の出来事に自由はありません。しかし、相対性理論から導きだされる宇宙空間では、物事は最初の状態だけでなく最後の状態からも影響を受けます。そのため、中間の出来事は最初からすべてが決まっているわけではなく、不確定な部分があります。そこに自由意志の存在する余地があるわけです」

わたしたちの最終的な運命は決まっているものの、どのようにしてそこに至るには正確には決まっていないというのです。

「私が1分後に何を決めるかはわかりませんが、何かを決定し実行するはずです。何を決めるか今はわかっていなくても、必ず決定はおこなわれる。過去が必ずしも未来の結果を縛るわけではないという、よい例です」






出典:モーガン・フリーマン「時空を超えて」
運命か? 自由意志か?



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