英語の辞書で「漆黒(しっこく)」を調べると
Jet black
と出てくる。
Jet(ジェット)?
ジェット・エンジンで飛んでいきそうな語感である。
なんで漆黒がジェットなんだ?
よくよく調べてみると「jet」とは
黒玉という宝石
のことだった。
琥珀(アンバー)が樹脂の化石であるのに対して、黒玉(ジェット)は
幹そのものの化石
そういえば、漆黒という日本語にも「漆(うるし)」という木の名前が使われている(後述)。
”英名である「jet」は、フランス語で同じ物質を表す言葉である「jaiet」に由来しています。 英語で漆黒のことを「jet-black」と表現しますが、これはジェットのもつ黒色から作り出された言葉です”
(ジュエリー宝石モール)
その歴史は?
”イギリスのウィットバイ(Whitby)という地で発見されたジェットは、およそ182万年前・ジュラ紀頃のものと推察されています。ジェット(黒玉)は容易に研磨できるため、非常に古くから宝飾品に応用されており、最も古いものでは、およそ紀元前17,000年頃の装身具が、スペインのアスチュリアス地方で発見されています。イギリスではビクトリア女王時代においてジェットがファッションに取り入れられ、特にモーニングジュエリー(死者を弔う際のジュエリー)としての地位を確立します。アメリカでは主として1920年代に流行し、女性や若者たちが、何本もの長いジェットビーズ・ネックレスを首から下げて歩いていたということです(ジュエリー宝石モール)”
ついでに日本の漆黒「漆(うるし)」を考える。
漆塗りの原料は、漆の幹に傷をつけて、そこから流れ出す樹液を採取する(宝石ジェットと異なり化石ではない)。最初、乳白色をしているその樹液は、たちまち酸化をはじめて茶色になる。これが「生漆(きうるし)」と呼ばれるものだ。黒漆は、極めて細かい鉄粉を生漆に混ぜることによって作られる(化学反応)。
中国の磁器は英語で「china(チャイナ)」と呼ばれるが、日本の漆器もまた「japan(ジャパン)」と呼ばれる。その国特有の芸術だからだ。
じつは日本では、縄文の昔から漆の樹液に”煤(すす)”を入れて塗り、光り輝く黒色を表現してきた。一方、エジプトでは黒いコールタールを原料に”輝く黒”を再現しようとしたが、それは永遠の憧れのままだった。
ヨーロッパに漆器(japan)が伝わるのは、日本の江戸時代。長崎から積み出され、オランダへと運ばれた(当時のオランダ人は紅毛人と呼ばれていたため、紅毛漆器といわれた)。
その日本の”漆黒”に魅了されたという「マリア・テレジア」
とりわけお気にめしたのが日本の「蒔絵(まきえ)」。蒔絵とは、漆工芸の一つで、漆地の上に金粉などを蒔いて固めたものである。
”私にとって(蒔絵は)世の中のすべて。ダイヤモンドさえどうでもいい。ただ2つの漆とタペストリーだけあれば満足です”
と、したためた手紙が残されている。
ヨーロッパでは長い間、どうやって漆の黒がでるのかが謎だったという。
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