「肥った豚よりも、痩せたソクラテスになれ」
元東大総長、大河内一男氏の語ったとされる有名な言葉(1964)である。
この言葉の原典は
19世紀、イギリスの哲学者ジョン・スチュアート・ミルの『功利主義論』
"It is better to be a human being dissatisfied than a pig satisfied; better to be Socrates dissatisfied than a fool satisfied."
『満足な豚(a pig satisfied)であるより、不満足な人間(a human being dissatisfied)である方が良い。満足な愚者(a fool satisfied)であるより、不満足なソクラテス(Socrates dissatisfied)である方が良い(功利主義・第二章)』
満足な豚(肥った豚) < 不満足な人間
満足な愚者 < 不満足なソクラテス(痩せたソクラテス)
東大教養学部長の石井洋二郎氏は言う。
「私は初めてこの言葉を聞いたとき、子ども心に『どうして”肥った豚”か”痩せたソクラテス”のどちらかでなければいけないのだろうか、と不思議でなりませんでした。どうせなら”肥ったソクラテス”になればいいじゃないか、と思ったわけです。ソクラテスであるためには必ず痩せていなければならないという道理はありません。ただ、ぶくぶくと肥ったソクラテスというのも何となくイメージしにくいですね」
また、こう付け加える。
「じつは大河内総長は、卒業式ではこの部分を読み飛ばしてしまって、実際には言っていないのだそうです。原稿には確かに書き込まれているのだけれども、あとで自分の記憶違いに気づいて意図的に落としたのか、あるいは単にうっかりしただけなのか、とにかく本番では省略してしまった。ところが元の草稿のほうがマスコミに出回って報道されたため、本当は言っていないのに言ったことになってしまった」
ドイツの思想家ニーチェは言った。
”きみは、きみ自身の炎のなかで、自分を焼きつくそうと欲しなくてはならない。きみがまず灰になっていなかったら、どうしてきみは新しくなることができよう!(『ツァラトゥストラ 』)”
石井洋二郎氏は言う。
「いま私が紹介した言葉が本当にニーチェの『ツァラトゥストラ 』に出てくるのかどうか、必ず自分の目で確かめることを決して忘れないように。もしかすると、これは私が仕掛けた最後の冗談なのかもしれません(東大卒業式の式辞にて)」
(了)
ソース:東大卒業式の式辞が深いと話題に「善意のコピペや無自覚なリツイートは......」(全文)
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