19世紀後半、ヨーロッパで初めて開発された風力発電。その風力発電は今、世界的に普及している。火力や原子力のように燃料を必要とせず、太陽光発電よりも設備利用率が高い。
GWEC(世界風力エネルギー協議会)によると、風力発電の世界累計導入量は約370GW(2014年時点)。これは原発およそ370基分に相当する規模だ。2005年までの導入量が約60GWだったことを考えると、ここ10年で実に6倍以上に急拡大したことになる。
世界トップは中国。全体の30%以上を占めている(114GW)。次いでアメリカ(64W)。この世界経済トップ2で、全体の約半分を占める。3位以降はドイツ、スペインと続き、トップ10にはイギリスやフランス、イタリアなどの欧州諸国がランクイン。インドやカナダ、ブラジルなどが後を追う。
ところで日本は?
2014年末時点の導入量は約2.7GW。全世界の1%にも満たないか細さである。太陽光発電と同様、政府によるFIT(固定価格買取制度)が発動されているにも関わらず。
なぜ、日本では風力が停滞しているのか?
まず、環境アセスメント(環境影響評価)という壁がある。風力発電による騒音や、動植物など生態系への影響、景観や日照障害(shadow flicker)などの問題が取り沙汰されている。2012年10月から出力7.5MW以上の風力発電所が環境アセスの対象となっており、その調査には4〜5年を要する。その費用はもちろん自腹である。
適地の問題もある。国土面積の狭い日本において、人気の場所(強い風が安定的に吹きつけるところ)は早いもの勝ちだ。
そこで最近は海の上、洋上風力が注目を浴びている。
2014年まで世界に約8.7GWの洋上風力が導入されているが、その90%以上がヨーロッパ。とりわけイギリスが熱心に導入を進めており、その世界シェアは半分以上(約4.4GW)。
日本では約50MWほどが建設されている。
”現在、千葉県銚子沖と福岡県北九州市沖では、NEDO(新エネルギー産業技術総合開発機構)が実証試験を行っており、また福島県沖合では丸紅などが世界最大規模の浮体式と呼ばれる洋上風力発電を建設中であるなど、少しずつだが動きが出始めている(Enegy Eye)”
しかし陸上風力と同様、環境アセスが厳しい。その海域に生息する動物への影響や、観光船やフェリーなどの航路なども評価対象になる。
伊藤正治(NEDO)統括研究員は言う。
「洋上での建設に際して、特殊船がないなど日本ではまだインフラが整っていません。建設や稼働後のメンテナンスなどにも時間やコストがかかっているのが現状です」
陸上風力に比べ、洋上風力はコストが高い。総工費が陸上の1.5〜2倍以上かかるケースもあるという。それでもメリットはあるという。
伊藤正治「洋上は陸上に比べて風が強く、安定的に吹く場所に設置できるので、発電効率が高いのです。また輸送に関しても、陸上であれば道路の幅やトンネルの高さなどの制限で、風車の大きさに限界があります。しかし洋上であれば、船さえあれば大型風車を運べ、出力を稼ぐことができます」
陸上風力の設備稼働率は一般に20%といわれているが、洋上の実証試験では平均30%以上の利用率が確認されているという。
伊藤正治「風力発電は壊れたときのリスクが非常に高い。とくに洋上風力の場合は、現場に行くにも船が必要です。波が高ければ近づくのさえ困難です。洋上はとくに塩害での被害も大きいです」
洋上と陸上、それぞれが一長一短。
試行錯誤が続いている。
ソース:エネルギー情報の季刊誌ENERGYeye(エナジーアイ)2015 Spring
次世代エネルギー全解明「完全 風力図鑑」
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