2015年4月9日木曜日
ブルーゾーンとは?
世界には、ある地域の10倍も多くの人々が100歳以上まで健康に生きる地域がある。それをダン・ベットナー(Dan Buettner)は『ブルーゾーン(The Blue Zones )』と呼ぶ。彼はナショナルジオグラフィックのライターであり、長寿の秘密(a de facto formula for longevity)を研究している。
ダンは言う。
「科学的に言えば、ヒトの体の寿命は約90年です。人体には35兆の細胞があり、これらの細胞は8年に一度は入れ替わっています。そして入れ替わるたびに、いくらかダメージを受ける。ダメージは蓄積され指数関数的に増えていきます。昔われわれが持っていたビートルズのアルバムをカセットテープにコピーして、友人にそのテープをまたコピーして、それを繰り返すとひどい音になっていきました。細胞でもちょうど同じことが起こるのです。だから、65歳の人間は12歳の人間の125倍の速さで老いていくのです。フラミンガム研究では、親友3人が肥満なら自分も肥満になる可能性が5割高くなることが知られています。つまり、不健康な人たちに囲まれていると、長期的に不健康になってしまうのです」
ヒトの寿命の限界(biological limits)は、10%が遺伝的に決まっているという(Danish Twin Study)。残りの90%はといえば生活習慣(lifestyle)が決めるそうだ。
長寿のための”最適な生活習慣(the optimal formula of longevity)”とは?
たとえば、イタリアのサルデーニャ島(Sardinia)。
Dan「島には140万人が住んでいますが、ヌオロ県(Nuoro province)という高地地帯がブルーゾーン(長寿地域)です。この地方では男性のほうが長寿で、100歳以上の人がアメリカの10倍以上も居ます(アメリカでは5000人に一人)。ただ単に100歳以上であるだけでなく、彼らは非常に活動的です。102歳の老人がバイクで仕事に出かけ、60歳も若い相手を腕相撲で負かすほどなのです(笑)」
村の歴史はキリストの時代にまで遡り、青銅器時代の文化が今なお温存されている。不毛な土地柄から、ほとんどが羊飼いをして暮し、低強度の肉体運動(low-intensity physical activity)が規則正しく続けられてきた。食事はほとんどが植物性(plant-based)。デュラム小麦(carta musica)でつくられた非発酵の全粒小麦パン、草で飼育された動物(grass-fed animals)のチーズ(オメガ3脂肪酸を多く含む)、通常のワインよりもポリフェノールを3倍も含むワイン(Cannonau)。
Dan「本当の秘密は、彼らが社会を形成する方法にあります。サルデーニャでは、齢をとるにつれて人間の価値が高まり(the older you get, the more equity you have)、その知恵を賞賛されるのです。アメリカでは、社会的な価値は24歳でピークになりますけどね(笑)」
また『祖母効果(the grandmather effect)』というものも見受けられる。年老いた両親が家族の近くにいることで、子供の寿命が4~6年延びるという(死亡率と疾病罹患率がより低くなる)。
日本の沖縄もブルーゾーンの一つだ。
Dan「沖縄本島の北部は世界一の長寿地域で、疾患なしで世界最長寿の人々が住んでいます。長い時間を生きたあとは、眠っている間にサッと他界します。それもなんと、しばしばセックスの後にです(笑)」
100歳以上の人口はアメリカの5倍以上。大腸ガンと乳ガンの発生率は5分の1(アメリカでは大きな死因)。食生活は植物性が中心で(plant-based diet)、いろいろな色の野菜を食べ、アメリカ人の8倍の量の豆腐を食べる。
Dan「何を食べるかよりも”どう食べるか(how they eat it)”が重要です。アメリカで問題となっている過食(overeating)を防ぐ方法がたくさんあるのです。たとえば”小さな皿(smaller plates)で食べること”。また彼らには3000年前からの古い格言があります。孔子(Confucius)の言葉『腹八分(The Hare Hatchi Bu)』、それを食事のまえに唱えます。腹八分とは満腹の20%手前で食べるのを止めること。満腹感(full feeling)が腹部から脳に伝わるには30分かかりますから、あらかじめ80%で止めることで過食を防いでいるのです」
『孤独は死への早道(isolation kills)』とダンは言う。
Dan「15年前、平均的アメリカ人には親友が3人いましたが、現在は1.5人になっています。もし沖縄で生まれたならば生涯を通じて付き合える友達が6人は持てます。沖縄には”模合(もあい)”という共同体があり、模合に入ると状況が悪いときや子供が病気のとき、親が死んだときなど誰かが助けになってくれます。順番に一定の金額を受け取ることができます」
Dan「アメリカでは仕事の時代が終わると、ある日ボンッと引退しますが、沖縄には”引退(retirement)”という単語がありません。その代わりに人生すべてを表す単語である”生き甲斐”があります。大ざっぱに約すれば、生き甲斐は”翌朝、目覚めるための理由(the reason for which you wake up in the morning)”となります」
翌朝、なんのために目覚めるか?
102歳の空手家は「空手道を発展させること」と答え、100歳の漁師は「家族ために週3回、魚を獲ってくること」と言った。102歳の女性の場合、彼女の生き甲斐は「101歳半離れた曾曾曾孫だ」と答えた。
世界のブルーゾーン(長寿地域)に共通する文化とは?
Dan「誰も運動を、つまり我々が考えるような運動(マラソンやヨガ)をしていません。その代わりに、彼らの生活それ自体が常に肉体活動と結びついています。100歳になる沖縄の女性たちは、毎日30回も40回も立ったり座ったりして、いろいろな場所にも行きます。サルデーニャの人たちは複数階の家に住み、階段を上ったり下りたりを繰り返します。店に行くのも教会に行くのも、友達の家に行くのもすべてが歩きです。彼らはじつによく歩きます。それはボケを予防できる唯一証明された行為です」
Dan「便利な道具などありません。庭仕事や家事をやってくれる押しボタンはありません。ケーキの生地をつくりたければ、自分の手で混ぜなければなりません。97歳の男性は、垣根をつくるのにセメントをこね、自分で柱を立てて回るのです」
Dan「どの文化にも”くつろぐ時間(time to downshift)”があります。サルデーニャ人は祈ります。沖縄人は先祖を祀っています。彼らには、沖縄の”生き甲斐”のような言葉があります。ブルーゾーンの人々は人生の意味を知っており、活動的な人生を過ごしています」
Dan「少しだけお酒を飲みます。肉を食べないというより、豆や木の実をたくさん食べます。そして過食を避ける方法をもっています」
Dan「これらの根底には、彼らの人間関係(how they connect)があります。家族を第一に考えて(put their families first)、子供や老人をよく世話します。彼らは生まれた時から、きちんとした人たち(the right people)に囲まれているのです。長寿に関しては、飲み薬やそのほかの短期的な解決方法(short term fix)は存在しないのです」
(了)
ソース:TED Talk
ダン・ベットナー「100歳を超えて生きるには」
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