2016年9月20日火曜日

ブッダの「パン」[鈴木俊隆]



話:鈴木俊隆





パンは小麦粉からつくられます。

オーブンに入れたときに、小麦粉がどのようにパンになるのかが、ブッダにとっては最も大事なことでした。私たちは、どのように悟りをひらくのか、ここがブッダの最大の関心でした。悟りをひらいた人、というのはブッダにとっても、また他の人にとっても、完全で望ましい人でした。

人間は、どのように理想的な人格を発達させることができるのでしょうか。どのようにして過去の聖者たちは、聖者となったのでしょうか。パンの生地が、どのように完全なパンになるのかを見つけるために、ブッダは自分で何度も何度もパンをつくってみたのです。そして、ついに成功したのです。それがブッダの修行でした。






しかし、毎日おなじものを何度も何度もつくるというのは、あまりおもしろいことではないかもしれません。あまりにも単調だ、とあなた方は言うかもしれません。繰り返し行うという精神を失うと、修行はとても難しくなります。しかし元気で強い気持ちがあれば、難しくありません。

いずれにしろ私たちは、じっとしていることはできません。なにかをしなければならない。そのとき、自分を観察し、注意し、そして今、ここの、自分に気づいていることです。

私たちの方法は、パンの生地をオーブンに入れ、そして注意して見守ることなのです。どのようにパンの生地がパンになるのかわかれば、悟りを理解できるようになるでしょう。この身体がどのようにして聖者になるのかということが、私たちのもっとも大事な関心です。

小麦粉がなにか、生地がなにか、聖者とはなにか、ということはそれほど興味がないのです。聖者は聖者です。人言の本性に関する形而上学的な説明がポイントなのではありません。

少なくとも、おいしくて見た目がよいパンをつくることには関心はあるべきです! 実際の修行は、あなたがパンをどう焼き上げるのか見つけるまで続きます。私たちの道には、秘密はありません。ただ、坐禅を行い、私たち自身をオーブンに入れるだけなのです。











引用:鈴木俊隆『禅マインド、ビギナーズマインド』




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