「”動きから感情を抜いていくこと”は、形を練習するうえで非常に重要だ」
と斎藤豊師は語る。
この考えは、新たに稽古で取り組みはじめた天神真楊流柔術においても言えることだという。
「天神真楊流に『片胸取(かたむなどり)』という形があるのですが、座して向かい合った一方が相手の胸を取るとき、この形がきちんととれると相手が打ち込めない状態となるんです」
試しに、斎藤師が後ろに立てた膝を前へ倒したり元に戻したりすると、そのたびに相手の攻撃が届いたり届かなかったりする。
「これは捕の意志とは関係なく起こるんです。ある状況において必要な条件を満たせば、技はかかる。そこに感情や想いといったものが介在しないのが”術”だということです」
「形を練っていくうちに、”形とは、自由に動くときの身体の感覚、あるいはその身体そのものをつくるものだ”と考えざるを得ない状態になりました。そうした動きだからこそ、自分の身体や感覚に集中できるのが古流の形だとおもいます」
たとえば伝書には「虚体となりで立居る」とある。
「この立ち方は、”ぎりぎり立っていられる最低限の力で立つ”というものでした。最小の力で立つこと。そのバランスを保ちつつそのまま動くことで、相手は倒れてしまうのです」
…
出典:
DVD付き 月刊 秘伝 2014年 05月号 [雑誌]
斎藤豊「伝書から紐解く”やわら”の術理の世界」
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