2014年5月8日木曜日

大道無門




無門為法門

無門を法門と為(な)す
入るべき門の無いのを法門とする



従門入者不是家珍

門より入る者は是(こ)れ家珍にあらず
門を通って入ってきたものは、家の宝といえない

従縁得者終始成壊

縁に従(よ)って得る者は終始成壊(じょうえ)す
縁によってできたものは始めと終わりがあって、成ったり壊れたりする



無風起浪

風無きに浪を起こす
風もないのに浪をおこす

好肉剜瘡

好肉に瘡(きず)を剜(えぐ)る
きれいな肌にわざわざ瘡をえぐる



掉棒打月

棒を掉(ふる)って月を打ち
棒を振り回して、空の月を打つ

隔靴爬痒

靴を隔てて痒(かゆがり)を爬(か)く
靴の上から痒みを掻く



不顧危亡 単刀直入

危亡を顧みず単刀直入せん
身命を惜しむことなく、ずばりこの門にとびこむ



設或躊躇

設(も)し或いは躊躇せば
もし少しでもこの門に入ることを躊躇するならば

也似隔窓看馬騎

也(ま)た窓を隔てて馬騎を看(み)るに似て
まるで窓越しに走馬を見るように

眨得眼来 早已蹉過

眼(まなこ)を眨得(さっとく)し来たらば、早く已(すで)に蹉過(さが)せん
瞬きのあいだに、真実はすれ違い去ってしまうであろう




大道無門

大道無門
大道に入る門は無く

千差有路

千差(せんしゃ)路(みち)有り
到るところが道なれば

透得此関

此の関を透得(とうとく)せば
無門の関を透過して

乾坤独歩

乾坤(けんこん)に独歩(どっぽ)せん
あとは天下の一人旅






抜粋:『無門関 (岩波文庫)』 無門慧開の自序
翻訳:西村恵信




0 件のコメント:

コメントを投稿