2018年3月17日土曜日

秩序の反対は無秩序ではない[レイ・カーツワイル]


話:レイ・カーツワイル



秩序はすなわち、無秩序の反対ではない。

無秩序とは、事象がランダムな順序で起こることだとしたら、無秩序の反対は「ランダムでないこと」になってしまう。情報とはデータの配列であり、有機体のDNAのコードとか、コンピュータのプロブラムのビットのように、その配列に意味がある。

一方で「ノイズ」とは、ランダムな配列のことだ。ノイズはその性質からして予測不可能ではあるが、なんの情報ももってはいない。しかし、情報もまた予測不可能なものである。もしも、それまでのデータから以後のデータが予測できるのなら、以後のデータは情報ではなくなる。よって、情報もノイズも圧縮することはできない(さらには、まったく同じ配列を復元することもできない)。

要素が交互に現れる予測可能なパターン(0101010101...など)には秩序があると思うかもしれないが、最初の数個のビット以降には何の情報もふくまれていない。

したがって、秩序立っているからというだけで、秩序があるとは言えない。秩序には情報が必要だからだ。秩序とは、目的にかなった情報のことである。秩序を測る基準は、情報がどの程度目的にかなっているかということだ。

生命体の進化における目的は、生存だ。進化アルゴリズム(生物進化をシミュレートして問題を解決させるコンピュータ・プログラム)を、たとえば、ジェットエンジンの設計に応用する場合、その目的は、エンジンの性能や効率や、あるいは他の条件を最適化することだ。

秩序を測ることは、複雑さを測るよりもさらに難しい。先の述べたように、複雑さを測る手法はいくつか提示されている。秩序を測るとなると、成功の程度を測る手段が必要となるが、それは、それぞれの状況に応じたものでないといけない。

進化アルゴリズムを作成するにあたっては、プログラマーは、そのような成功を測る基準(「効用関数」と呼ばれる)を盛り込む必要がある。テクノロジーの発展における進化のプロセスでは、経済的な成功を測る基準を取り入れることになるだろう。

情報がより多くあるだけでは、必ずしもよりよく適合することにはならない。ときには、複雑さを増すよりも単純にすることで、秩序がより深まり、目的によりよく適合できる。

たとえば、新しい理論が生まれて、見たところばらばらのアイディアを、ひとつの大きなより一貫性のある理論へと結びつけるようになれば、複雑さは少なくなるが、「目的にかなった秩序」は増大する(この場合、目的とは、観測された現象を正確にモデル化すること)。

実際のところ、より単純な理論を打ち立てることで、科学は前進していくものだ(アインシュタインも「全てをできるかぎり単純にせよ。ただし単純すぎてもいけない」と言っている)。





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レイ・カーツワイル (著), 小野木 明恵 (翻訳), 野中 香方子 (翻訳), 福田 実 (翻訳), 井上 健 (監修)

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