話:上田正仁・東京大学大学院教授
ここでは「キュリオシティ・ドリヴン(curiosity driven)」という考え方を紹介しましょう。これは目標に到達するのに、ゴールとは一見関係のなさそうな方向に好奇心(curiosity)のおもむくまま寄り道をしながら進むアプローチです。
これに対して、国家プロジェクトのように目標を定め、最短距離を一直線に進むやり方を「ゴール・オリエンテッド(goal oriented)」といいます。
「キュリオシティ・ドリヴン(curiosity driven)」は「ゴール・オリエンテッド(goal oriented)」と比べて、一見、非合理・非効率にみえますが、当初の目的に縛られない自由な発想が得られるという特徴があります。
その好例は小柴昌俊博士です。博士はニュートリノの検出でノーベル物理学賞を受賞しましたが、博士がニュートリノを観測したのは、陽子崩壊を検出するカミオカンデというまったく別のプロジェクトにおいてでした。
小柴博士に限りません。世に言う大発見のほとんどは、この「キュリオシティ・ドリヴン(curiosity driven)」によるものです。前を見て走っているときは目に止まらなかった道端の草花に、好奇心を覚えて調べるうちに、思わぬ発見につながる、というのは実に興味深いことだと思います。
最近では企業もそのことに注目し、Googleは勤務時間の20%をそのとき関わるプロジェクト以外の好きなテーマの研究に使って良いとする「20%ルール」を採用し、次々に新しいイノベーションを生み出しています。私もこの手法には賛成です。制限された環境や条件の中では、こういうアイディアはなかなか生まれるものではないと思うからです。
引用:致知2013年11月号
「考える力を深めれば、知識は知恵に変わる 上田正仁」
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