2015年6月30日火曜日

虎と沢庵和尚 [剣客禅話]



〜話:加藤咄堂〜



 徳川家光の代に、朝鮮より虎を上覧に供せし時、柳生但馬守(やぎゅう・たじまのかみ)は其の檻の中に入って、よく虎を睨みて尻込(しりごみ)せしめしに、沢庵(たくあん)和尚は静かに其の檻の中に入って、虎の頭を撫でて出て来たといふ。

 一は気をもって彼を制し、他は和をもって之を服したので、これこの時、己を忘れ、物を忘れ、いわゆる無物の境にあり、神武にして殺さざるもの剣道の極意、その妙、口言うあたはざるものがあるのである。





 引用:加藤咄堂『剣客禅話



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