2015年10月2日金曜日

「空よりや降りけん。土よりや湧きけん」 『徒然草』最終段



第二百四十三段



(や)つになりし年、父に問ひて云はく、

「仏は如何(いか)なるものにか候(さうら)ふらん」

と云ふ。父が云はく、

「仏には、人の成りたるなり」

と。



また 問ふ、

「人は何にして仏には成り候(さうら)ふやらん」

と。父また、

「仏の教(をしへ)によりて成るなり」

と答ふ。



また 問ふ、

「教へ候(さうら)ひける仏をば、何が教へ候(さうら)ひける」

と。また答ふ、

「それもまた、先の仏の教(をしへ)によりて成り給(たま)ふなり」

と。



また問ふ、

「その教へ始め候(さうら)ひける、第一の仏は、如何(いか)なる仏にか候(さうら)ひける」

と云ふ時、父、

「空よりや降りけん。土よりや湧きけん」

と言ひて笑ふ。「問ひ詰められて、え答へずなり侍(はんべ)りつ」と、諸人に語りて興じき。





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