めくらさんは
目が見えないのに
なかなかケガをしない
むしろ
目の見える人のほうが
石につまずいたり
ものに突き当たったりして
よくケガをする
なまじっか
目が見えるがために
油断をするのである
乱暴になるのである
目の見えない めくらさんは
手さぐりで歩む
一歩一歩が
慎重である
謙虚である
そして
一足歩むために
全神経を集中する
これほど真剣な歩み方は
目の見える人には
ちょっとあるまい
この
めくらさんの歩み方を
見習うがいい
「一寸先は闇の世の中」
といいながら
おたがいに
ずいぶん乱暴な歩み方を
しているのではなかろうか
いくつになっても
わからないのが
人生というものである
わからない人生を
わかったようなつもりで歩むことほど
危険なことはない
一歩一歩
踏みしめて
行くことである
謙虚に
そして
真剣に
松下幸之助
抜粋:
「手さぐりの人生」
松下幸之助
From:
道をひらく
松下幸之助
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