2018年4月27日金曜日
上手か? 名人か?【松下幸之助】
話:松下幸之助
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昔、ある厳しい先生がいたそうです。刀をつくるのが仕事で、弟子をとったそうです。ところが3年やっても何一つ教えてくれない。庭を掃いたり掃除をしたりするだけで、とんちんかんと刀を鍛錬する作業を教えてくれない。その割にがみがみ言って難しい。
違う先生は、同じ刀鍛冶であっても、これは克明に教えてくれる。そこで育った人間は皆、一人前の刀鍛冶になる。
こちらのやかましい先生は何十人いても皆、刀鍛冶にならない。1人や2人はできるけれども大部分は皆、辞めていってしまう。
どちらがいいか?
このいい先生の方からは名人が出ない。上手は出るけれど名人が出ない。ところが他方は満足に教えてくれない。必ずやったら叱られる。庭掃きとか雑学ばかりさせられる。3年たってもコツ一つ教えてくれない。そういうことでこんなところにいたら駄目だと、刀鍛冶になれないと皆、辞めて行ってしまう。けれども辞めずに残っていた男がいた。それが5年たち10年たって初めて先生に教えてもらうようになった。それが名人になった。
しかし、この上手な先生は教えることはうまい。いたわって育てる。でもここでは上手になっても名人は出ない。こちらは方法までは教えない。勝手にやれと、非常に不親切だと。けれども、ここを辛抱してやったら名人になる。上手は出ないけれど名人が出る。
こんな話を聞いたことがあります。まさにそうだと思った次第です。
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