2018年4月27日金曜日

そこには無い「痛み」のメカニズム


From:
サンガジャパンVol.29
苦しみを癒やす「愛」の育み方
対談 小池龍之介 前野隆司





――前野先生は以前、「痛み」というものを「電気信号」という観点からご説明されていましたが、そのような見方で理解すると、どのようになりますか?


前野隆司 痛みは電気信号によって作り出されているものです。身体の痛みも心の痛みも、脳の同じような場所で感じていると言われていますね。

指を切って痛くても、指には痛覚受容器、いわゆるセンサーしかありません。つまり痛みはそこにはなく、実際は脳の感覚野の神経細胞が発火することによって、痛みを感じているにすぎないのです。

つまり、不思議なことに、痛みとは本当は存在しないものなのですよ。





小池龍之介 皆、痛みを実体であると勘違いしています。しかし、本当はそこからやってきた神経信号のデータを元に、脳が「そこが痛い」と感じるデータを出力して「その場所が痛いといういうリアリティーを出す詐欺」みたいなことを行っているにすぎないのです。

その痛い場所に、座禅をしていてありのままにじっと意識を向けていくと、脳が見せている塊のような痛みではなくて、もっと細かな電気エネルギー状の流動的感覚を感じます。電気エネルギーがピピピピピンと流れたり滞ったりしているだけで、痛いという現象は起きていないとわかってくるのです。

初心者の方であっても、「痛みを見ていてください」と言うと、痛みだと感じていたものが、何かドッドッドッという血の流れのようなものの生滅と感じられることがありあす。生滅の間には、痛くないと感じている瞬間があるとおぼろげに自覚できて、痛みがあまり気にならなくなってくる場合もあります。

もし感情を揺らさずに、その現象をもうしばらくそのまま眺めていられれば、ドッドッドッと感じられていたものが、もう少し精密にドン・ドン・ドン・ドン・ドドン・ドン・ドン・ドン・ドドン・ドン・ドンというように感じられてきます。

脳で編集されたものがここまでほどけてくれば、もう痛みとは認識できなくなります。要するに、ありのままに近づけば近づくほど、脳が作っている痛みを感じなくなるか、実はなかったのだとわかるのです。







From:
サンガジャパンVol.29
苦しみを癒やす「愛」の育み方
対談 小池龍之介 前野隆司




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