2013年5月16日木曜日
睡眠を知る。その法則を知る
もし昼間、猛烈な眠気に襲われたら?
さすがに仮眠もとる状況にない時
「座ったままでも、眼を閉じているだけで眠気は減っていきます。理想は10分、せめて5分。いえ、たとえ1分でも目を閉じるだけで効果があります」
そんなアドバイスをくれるのは、「睡眠学」をよく知る菅原洋平さん。
昼間に眠くなってしまうのは、なにもランチを食べたからだけではなく、「睡眠負債」が脳に溜まってしまった結果だ、と菅原さんは言う。
「私たちの脳には、目覚めている限り『睡眠物質』が溜まっていきます。この物質が溜まった状態のことを『睡眠負債』と言います」
睡眠負債が溜まれば溜まるほど、脳の働きは減速していく。
「これ以上、脳を働かせては能率がおこる」と脳が判断したとき、大脳を強制的に眠らせるシステムが稼働する。その時だ、われわれが昼間でも強烈な眠気に襲われるのは。
そのタイミングは一日に2回。起きて8時間後と22時間後だそうだ。6時起床の方であれば、8時間後は午後2時、22時間後は翌朝4時ということになる。
「大勢の人は、午後1時から3時の間に眠くなってしまいます」と菅原さん。
幸いなことに、その睡眠負債という物質は、しばらく目を閉じているだけでも、だいぶ解消されるのだそうな。それが冒頭の「座ったままの瞑目10分」。もしくは5分、いや1分でも効果があると菅原さんは言うのである。
睡眠物質の一つが「メラトニン」。
これが脳内に十分に溜まると、人は眠くなる。逆に、この物質が減っていくと、人の脳は活性化する。
メラトニンは暗くなると急速に増加し、明るくなると減っていく。これが体内時計のリズムを形づくる。
明暗に反応するメラトニンの単純な性質を利用すれば、睡眠をコントロールすることも可能となる。
朝の光を浴びれば、眠気物質メラトニンはぐんぐん減っていく。すると、脳も身体も活性化していく。たとえもう少し眠くとも、カーテンを開けて光を入れておくだけでも、起きる準備はできてくる。
夜は夜で、暗くすればよい。ただ、眠るのは起きるほど単純ではない。それは夜眠れない人が多いこととも関係している。
睡眠物質メラトニンは、その原料がなければ、増えるに増えられない。だから原料不足になると、いくら暗くしても眠気は襲ってこない。
たとえば、朝食の定番の納豆などには、その原料が存分に含まれている。朝の納豆が、夜の快眠につながるとは、ずいぶんと理に適った話ではあるまいか。
具体的には、納豆や魚などに含まれる必須アミノ酸のトリプトファンが、眠気を誘うメラトニンの大元となる。
そのトリプトファンが昼間、脳内でセロトニンとなり、暗くなるとメラトニンに変わり、人を眠くするということだ。
また、眠気には体温も深く関係してくる。
体温には表面の温度に加え、「深部体温(直腸体温)」というものがある。深部体温が下がると眠くなる。遭難した雪山で眠くなるのは、そのせいだ。
雪山にいなくとも、起きてから11時間後に深部体温は自然と下がりはじめる。そのまま明け方まで下がり続け、普通の生活をする人ならば明け方の4時に最も低くなる。
深部体温が低いままでは、なかなか起きられないし、逆に高いままでは、なかなか眠くならない。
起きられないのなら、少し身体を動かして深部体温を上げれば、目が覚めてくるかもしれない。
眠くならないのなら、じっと動かずにいれば良いかもしれないし、逆療法として睡眠1時間前に入浴などで体温を上げるという方法もある。深部体温には、急に上げるとその分、より深く下がるという性質もある。
だが、睡眠には身体だけでなく、頭の問題もある。
深夜に日本代表のサッカーを見た後は、きっと頭がポッポと熱くなっていて、容易には寝付けないはずである。
そんな時は文字通り、「頭を冷やせばよい」と菅原さんは言う。
ただ、首筋を冷やすのだけは厳禁だ。逆に目が冴えてしまう。耳の上から後頭部、その辺りが冷やすポイントとなる。
「睡眠には法則があり、コントロールできる」
菅原さんは、そう断言する。
それは、まさに願ったり。
出典:致知2013年6月号
「ビジネスマンなら覚えておきたい睡眠の法則 菅原洋平」
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