スポーツと健康は、つながっているように思える。
ところが、たとえばマラソンのような、激しすぎる運動を行うと「免疫力」は低下してしまうのだという。
「運動というのは、身体にとっては一種のストレスです。『免疫』という点から見ると、デメリットもあるんです」と、免疫学の竹田和由准教授(順天堂大学医学部)は語る。
たとえば、マラソン大会に出場したランナーと、キャンセルしたランナーの2週間後の健康状態を比べると、マラソンを走った人のほうが「6倍近く感染症にかかっていた」というデータも報告されている。
要するに、マラソンという過激な運動がその人の免疫力を低下させ、そのため感染症に対して脆弱になってしまっていたのだ。
なぜ、過ぎた運動が免疫力を低下させてしまうのか?
その一因となるが、NK細胞(ナチュラル・キラー細胞)の活性低下である。
このNK細胞というのは「殺し屋」の異名通りに、身体中を隈なくパトロール監視するのが、その役割である。
ところが、運動やスポーツが「ストレス」になってしまうほど激しすぎる時、NK細胞はパトロールどころではないほどに疲れきってしまうのだという。
「運動中はアドレナリンなどが分泌されて、NK細胞の活性も上がっているんですが、運動が終えてしばらくすると、張り切り過ぎた反動でいつもよりガクッと落ち込んでしまうんです」と、竹田准教授は説明する。
なるほど、燃え尽き症候群となってしまうNK細胞。そのスキに乗じて、感染症の魔の手が忍び入るというわけだ。
NK細胞が燃え尽きてしまったこの状態は、「オープン・ウィンドウ」とも呼ばれ、アスリートたちが風邪をひきやすいのも、それが原因でないかと考えられている。
それゆえ、免疫学の観点からすれば、「運動は軽度のものが好ましい」というところに落ち着いていく。
ただ、多少の激しい運動をした後でも、NK細胞の好物を与えれば、その活性度は極端に落ち込まないという。
「たとえば、キノコなどに含まれる多糖類(βグルカン)、R-1乳酸菌を使用したヨーグルトなどを摂ると腸管の免疫が刺激されて、運動後でもNK細胞が再活性化することが分かっています」と竹田准教授。
ちなみに、牛乳よりもヨーグルトのほうがずっと、風邪をひく確率を減らしてくれるという研究結果も示されている。
運動・休養・栄養のバランス。
「殺し屋」の異名をもつわりには、意外とデリケートな面もあるNK細胞(ナチュラル・キラー細胞)であった…
(了)
出典:Number
「ヨーグルトを摂って、免疫力を向上させよう」
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