2013年7月11日木曜日

「酵素」を意識した食生活 [鶴見隆史]



現代人の身体には、栄養よりも「酵素」が不足しているというのだが。

「酵素とは何か? 家の建築にたとえてみるとわかりやすいでしょう。この場合、建築に必要な『資材』が栄養素であり、建築にたずさわる『作業員』が酵素です」

そう言うのは、鶴見クリニック院長の「鶴見隆史(つるみ・たかふみ)」先生。



たとえ栄養は足りていても、身体の組み立てを行う作業員「酵素」が足りなければ、人間の生命活動は滞ってしまう。戦後日本の食生活は、食品を通じての酵素の摂取量が大幅に減ってしまっている、と鶴見先生は言う。

「人間の体で毎日作られる酵素の量はほぼ一定です。そしてその生産量は、年を取るにつれて次第に減っていきます。いわば携帯電話の電池のようなもので、充電をしても新品の頃のようにはだんだん長く持たなくなっていくのです」

一日の酵素の生産量が限られているということは、「一生涯に生産される酵素の量」も同様に限られているということである。そのため、酵素の量が「人の寿命」をも左右するのだとか。

「ゆえに酵素の無駄使いを少しでも減らすことは、健康や長寿のためには何よりも大切です」と鶴見先生は言う。








先生は小さい頃、小児喘息で悩まされていたという。だが、祖母が「生キャベツ」を朝に夕に山盛り食べさせてくれたことで、あれほど苦しんでいた喘息がピタッと治まったのだそうだ。

当時、その治癒の理由はわからなかったというが、大学の時に出会った書「酵素栄養学(エドワード・ハウエル著)」にその理由が示されていた。

「とくに印象的だったのは、病気になるのは『火を通したもの』を食べる人間と家畜だけであり、『生もの』を食べる野生の動物に病気はないという指摘でした」と先生は言う。



食べ物に含まれる「酵素」は高温によって死んでしまう。つまり、「火を通したもの」ばかりを食べていると身体に必要な酵素が補給できないというのである。

その点、かの「生キャベツ」には酵素がふんだんに含まれており、それが喘息を癒したのだろうと考えられた。

スコットランドの研究者オアー氏らの実験によれば、加熱した食物だけを与えられたネズミには、繁殖能力の低下や感染症など、さまざまな病気が現れたという。








「人間の身体を『樹木』にたとえると、根っこは腸内壁の絨毛、土壌は腸中の栄養物。樹木が根を通じて土壌の栄養を吸収するように、人間の腸絨毛が栄養を吸収するのです」と先生は言う。

さらに最近の研究によれば、人間の「免疫力」の80%は腸にあるとのこと(小腸70%、大腸10%)。つまり、腸はそれほど重要であり、その活動には「酵素」が必要とされるのだそうである。

もし酵素が不足すれば、腸内の栄養物は腐敗して毒物となり、自身の身体を傷つける「活性酸素」を生み出してしまう。たとえば、自分のおならや便が臭い匂いはその警告信号だという。








「酵素を阻害する物質は、主に4つ。それは『重金属』『薬』『種』『白砂糖』です」と先生は言う。

「重金属」はヒ素、水銀、鉛、カドミウムなど公害問題でお馴染みの面々。「薬」というのは人が作り出した「化学物質」。

「種」というのは、人間の身体に入ると酵素の働きを止めてしまうらしい。そして「白砂糖」というのは、大量に酵素を浪費してしまうのだとか。








では、どのような食が酵素を補給できるのか?

酵素は48℃以上の加熱によって死滅してしまうということから、「生」で食べるののは大変に良いという。

「酵素を効率良く摂るためには、良質な水分やビタミン、ミネラル、食物繊維が豊富な野菜や果物から撮るのが一番です」と鶴見先生は語る。

生野菜や果実をすりおろしたり、ジュースにしたりするのは、酵素摂取を多いに助けるという。砕かれることで、酵素が細胞外に出てきて、吸収できる酵素量は何倍にもなるのだという。








世間では「生ものが身体を冷やす」という俗説があるが、本当に身体が健康になった時、酵素は抹消の毛細血管まで血液を送って身体をむしろ温める、と先生は言う。

また、「酵素は胃の中で死んでしまう」という話もある。確かに胃で不活性化する酵素もあるそうだが、それは一時的なもので腸にまで至れば再び活性化するのだそうだ。








ソース:致知2013年7月号
「酵素ジュースで健康長寿 鶴見隆史」


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