2013年7月9日火曜日

赤ん坊と「涅槃」 岡潔の言葉



抜粋:「人間の建設」より岡潔の言葉



赤ん坊がお母さんに抱かれて、そしてお母さんの顔を見て笑っている。

その頃ではまだ「自他の別」というものはない。母親は他人で、抱かれている自分は別人だとは思っていない。しかしながら、「親子の情」というものはすでにある。

自他の別はないが、親子の情はあるのですね。



そして「時間」というようなものがわかりそうになるのが、だいたい生後32ヶ月過ぎてからあとです。そうすると、赤ん坊にはまだ時間というものはない。

だから、そうして抱かれている有様は、自他の別なく、時間というものがないから、これが本当の「のどか」というものだ。
それを仏教で言いますと「涅槃」というものになるんですね。



のどかというものは、これが平和の内容だろうと思いますが、自他の別なく、時間の観念がない状態でしょう。

それは何かというと「情緒」なのです。自他の別もないのに、親子の情というものがありえる。それが情緒の理想なんです。矛盾でなく、初めにちゃんとあるのです。

だから、時間・空間が最初にあるというキリスト教などの説明の仕方ではわかりませんが、私の世界観はつまり、最初に情緒ができるということです。







抜粋:「人間の建設」岡潔・小林秀雄

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