かつて中国の「老子」は
「『墨』とは東洋人が生み出した道具で、非常に奥が深く、あらゆることを表現しうる」と言った。
墨には「一切の色」が含まれていて、その「玄(くろ)」は闇ではなく、黒になる一つ前、つまりどこかに「明るさ」を残している、と老子は言う。
「玄人(くろうと)」とは、その墨の「玄(くろ)」
その道を極めながらも、完璧にやりのけるのではなく、その「一歩手前」でとどめている。
そうやって、どこかやり残している部分があって、素人が手がかりにできる場、入り口のようなものをつくっておくのが玄人(くろうと)なのだという。
あえて完璧にしない。
何か足りないものを一つ残しておく。
それが「玄(くろ)」であり、老子いわく「徳」の一番至れるもの。それは有も無も合わさった万物の根源、そして終わりでもある。
出典:致知2013年7月号
「墨に魅せられて百年 美術家・篠田桃紅」
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