2013年9月28日土曜日
日本人女性初、プロ・クライマー「尾川とも子」
「私はよく『V14の岩を登るのは、天井に割り箸とペットボトルの蓋がついていて、それを伝って5m進むようなもの』と例えています」
そう言うのは、日本人女性初のプロ・クライマー「尾川とも子(おがわ・ともこ)」。昨年(2012)、女性として世界初となる最高難易度V14の岩場(カタルシス・那須高原)の登頂に成功した。
「指の第一関節も引っ掛からないような凹(へこ)みを頼りに岩場を登っていくんです。指の角度を1mmずらしながら、『こっちのほうが力が入る』などと研究しながら」
年月にして3年、回数にして500回くらい挑戦したというV14のカタルシス(那須高原)。
「さすがに100回くらい失敗した時は、10年くらいかかるんじゃないかなと思って、ため息ばかりでした」と尾川さんは言う。
「失敗を重ね続け、ある時『登ってやる』という感じではダメだと気づくんです。というのは、岩は湿度や気温、風向き、風速によって表情がまったく違います。『今日はこういう表情になるんだ』と理解して進んでいかないと、指の力の入れ方が変わってきます」
初めて見た時は「ドラゴンのように威圧感があった」というカタルシスの岩場。
しかし2年目くらいからは、「ああ、この凹み知ってる。この突起も知っているよ」という感じになってきたという。
「3年目に達成した時は、仲良しの友達にしか思えなかったですね。500回も挑戦していると『制覇』という気持ちにならないんですね」
「ある時期から考え方を変えました。一つ失敗するごとに『この指の形じゃダメだった』というヒントをもらったんだと、だから、私はカタルシスを登るのに『500のヒント』が必要だった。今はそう思っています」
ついに最高難度グレードV14の岩場(カタルシス)に登り切った尾川智子さん。
その功績が讃えられ、その年に世界で一番活躍したクライマーに贈られる「Golden Piton賞」を受賞(2012)。日本人3人目となる快挙であった(日本人女性としては初)。
(了)
ソース:致知2013年10月号
「プロの女性クライマーとして、いつもフロンティアでありたい」
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