2013年3月15日金曜日

「ありがとう」の反対語とは?



してもらったこと。

お返しをしたこと。

迷惑をかけたこと。



この3つの問いかけ。

それらを通じて、自分の内面を深く見つめていくのが「内観(ないかん)」。







ある男性は、重度の認知症になった母親の介護に葛藤を抱いていた。

「意志の疎通もできなくなった親を介護することに、どんな意味があるのか?」



はじめは内観にあまり乗り気ではなかったというその男性。

しかし、「あるイメージ」が浮かんだことで、みるみる内観が深まっていったという。



その「あるイメージ」とは、真っ黒な俵型のおにぎり。

男性が小学生の頃、友だちが家に遊びに来るたびに、母親は「ノリを巻いた真っ黒な俵型のおにぎり」をたくさんつくってくれた。



しかし、男性はそれが恥ずかしかった。

「ほかの家ではドーナツやクッキーが出てくるのに…。なんで、うちはおにぎりなんだよ…」



当時、男性の家では2人の姉が進学したばかりで、経済的にとても苦しかった。母親には、お腹を空かせてくる子どもたちに、お菓子を買ってあげる余裕がなかったのだ…。

熱々のご飯で手を真っ赤にしながら、たくさんのおにぎりを握る母親の笑顔。

その笑顔が俵型の真っ黒なおにぎりと結びついたとき、男性は気づかされた。母親の想いに…。そして、その想いは男性の胸をこれでもかと突き上げるのであった…。



以来、男性が母親の介護を苦にすることはなくなっていた。

「自分の中に鬼を発見すると、不思議と仏になる」

この言葉は、内観の創始者である吉本伊信(よしもと・いしん)氏の言葉だという。



「ありがとう」の反対語は何か?

それは「当たり前」なのではないか。



自分を中心に物事を見たとき、その心は「当たり前」で占められている。

しかし、その同じ物事を反対から見てみれば…。

きっと「ありがとう」で一杯なのだ…!





出典:致知2013年4月号
「『ありがとう』の反対語」

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