仏教は「悟り」の宗教、キリスト教は「祈り」の宗教。
では、神道は?
「『祭り』の宗教です。日本全国で一年間に行われる祭りの数は30万回以上。毎日、平均820回以上の祭りが、日本のどこかしこで行われているのです」と、松尾大社(京都)の佐古一洌(さこ・かずきよ)宮司は言う。
「神饌(しんせん)の上がらぬ祭りなし」
そう言われるように、神様のお食事である神饌(しんせん)の献供なくして、祭りは始まらない。そして、その神饌の中には必ず「お酒」が供えられている。
佐古宮司の松尾(まつのお)大社は「酒の神」。1,300年の昔から、酒造りの技術をもっていた新羅系の渡来人「秦氏(はたし)」との関わりが深い。
「秦氏の中に須須許里(すすこり)という方がおられて、この人が『お米を噛んで』お酒を造ったのです」と佐古宮司は語りだす。
「そのお酒を天皇様に差し上げたところ、天皇様はたいそう喜ばれた」
♪ 須須許里が、醸(か)みし御酒(みき)に、我酔いて
事無酒(ことなぐし)笑酒(ゑぐし)に、我酔いにけり ♪
上機嫌の天皇様は、こんな和歌を詠んだそうだ。
「つまり、須須許里が造ったお酒を飲んで、平穏な酒(事無酒)で、ニコニコ顔(笑酒)になったということです(佐古宮司)」
その当時のお酒は「一夜酒(ひとよざけ)」がほとんど。そして白黒の二種。
「白は濁り、黒は木灰を入れて黒くしたもので、粥状の薬用酒です」と佐古宮司。
清酒が供進されるようになるのは、明治以降とのこと。
さすが、酒の神を祀る松尾大社の宮司、酔ってもいないはずが、お酒の話が止まらない。
「お酒を飲めば正直になります。『酒の中に真あり』と云われるように、お酒を飲むと本心を言うのです。逆に『盃の縁から秘密が漏れる』というのもありますが…」
「『飲酒十徳』というのは、お酒を飲むと十の徳があるということ。ですが、『飲酒三十六過』というのは、酒を飲めば36の過ちがあるということ…」
「酒は『百薬の長』か、それとも『百毒の長』か…」
とりあえず、その辺で…。
出典:致知2013年4月号
「祭りは真心の発露である 佐古一洌」
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