2013年11月4日月曜日

もし言葉がなかったら…  [鈴木大拙]



話:鈴木大拙



さて”言葉”ですが、言葉は最も重要な価値あるものです。人間が社会生活を送るには、何らかの形で言葉を使わずには暮らせない。

ところが、言葉は人間が発明した大変な”くせもの(the most treacherous thing)”です。言葉で自分を縛ったり、不自由さを嘆いたりする。もし言葉がなかったら、みんなどんなに自由になれることでしょう。

言葉を話すことで、われわれが肉体的な存在だと分かります。われわれは身体と心、また魂について語りますが、それは単なる言葉にすぎません。我々はここにあるものが身体だと考えます。

科学者は、身体を無数の要素、原子に分解する。その原子はサブアトムに、さらに別の小さな形の原子に分解される。こうしてさらに分解を続けても、まだ分解し分析しうる何かが残ります。分裂と分割について議論は果てしなく続くのです。

だから、言葉がみんな取り除かれ、科学的装置が壊されると、本当に完全な自由に至るのです。そうすれば、一極から反対の極まで空間を移動でき、同時に”はじめも終わりもない時間(beginning-less time and endless time)”に住めます。これ以上に自由な世界はありえない。これが物事を正しく見ること(正見)なのです。

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