2013年11月12日火曜日
多関節の生む異質の円運動 [太極・忽雷架]
北京で伝えられる、
極めて異質な”もう一つの太極拳”
「太極・忽雷架(こつらいか)」
海中で群れなす小魚が一斉に向きを変えるような、そんな異質な動きを連発するという。
「この暖かくもなく寒くもない地域(安徽省蕭県)の”武術熱”はずっと以前のことで、かなり古い時代まで遡るだろう」
忽雷架の若き伝承者、張長念は話す。
「ここは古来の黄河故道からあまり遠くない。黄河故道は昔から戦争や盗賊団の多い場所で、おのずと武術が発達した。この地の武術熱はその影響があるだろうと思う」
ーーゆっくりと動く套路が特徴的な太極拳にあって、太極忽雷架はその名が示すとおり、閃光のように套路の動作が一瞬にして変化して、その切れ目が判別できないことが一つの特徴となる(月刊『秘伝』2013年9月号)。
ちなみに、日本で1990年代にヒットした漫画『拳児』にもこの太極拳「忽雷架(こつらいか)」が登場する。
忽雷架では、身体各部を関節よりも細かい「圪節」に分解することで、あたかも多関節化した身体をつくりあげる。関節が少ない円運動は、クランクのような動きとなって力の無駄が多くなるが、細かい節の集合体は、音速を超える”鞭”のような動きを生じて、驚異的なスピードを生み出すこととなる。
張長念は言う。「身体の各部を”細かい節”に分解してゆく。たとえば1つの腕に7〜8つの『圪節(圪は小さな塊)』が生まれるイメージだ。圪節は細かくなればなるほど、より滑らかで可動域の大きな円を描くことが可能となる。
——忽雷架の「圪節」の概念は、ちょうど角の無数の集合体が最終的に”円に至る”といった一刀流剣術の概念に通じるものがある(月刊『秘伝』)。
張長念は言う。「全身が円を描き、細かく分解されたような状態になってはじめて、よい”勁”を発することができる。勁は”圪節”を伝わり発せられるので、圪節が細かければ細かいほど発せられる勁も強力なものとなる。全身が細かく圪節に分解された状態であれば、勁は一瞬の間にその圪節を伝わり、さらに圪節ごとに増大されて大きな威力を発することができる」
「さらに円には”蓄放”の効果もある」と彼は言う。
発勁はどこの流派にかぎらず「蓄」と「放」で構成される。「蓄」というのは、弓矢をいっぱいにひいて力をためたような状態。「放」というのは、それを一気に放った状態のことをいう。
——圪節に距離・空間があるというのは、より自在に動けることを意味する。鍛錬を重ねることで、自らの中に空間を作り出し、それによって動きはより滑らかなものとなる(月刊『秘伝』)。
ソース:月刊 秘伝 2013年 09月号
「閃光の発勁 太極忽雷架」
登録:
コメントの投稿 (Atom)
0 件のコメント:
コメントを投稿