2012年9月13日木曜日

泥中の鎧武者

1415年、フランスに進軍したイングランド軍。その兵力は7,000。敵対するフランス軍2〜3万の4分の1に過ぎなかった。ところが、ここで「戦史でも異例の番狂わせ」が起こる。イングランド軍が4倍もの兵力を有するフランス軍を打ち破ったのだ(アジャンクール)。

なぜか? 軽装備のイングランド軍に対して、フランス軍は「重装備の鎧」に身を固めていたというのに…。じつは、身を守るためのその鎧が「重荷」になったのかもしれない。

15世紀に一般に使われていた鎧は「30〜50kg」。頭から手足の先まで覆うその鎧は、身体中に重さがのしかかる。しかも、胸部が板で締め付けられているため、呼吸は短く浅くならざるを得ない。ある実験の結果、鎧を着用したまま戦う負荷は、通常の2倍になった(実験は実際に戦わずに、ルームランナーで行われたのだが…)。



当時のアジャンクールの戦場は、秋の大雨でおおいにぬかるんでいた。重い鎧を来たまま、「泥の中」を走ることを強いられたフランス軍。そのエネルギー消費は4倍にもなった可能性がある。

「歴史を変えるには十分」だ。



出典:
日経サイエンス 2011年 12月号
「アジャンクールの鎧」

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