1987年の初開催以来、今年で25回目となった鈴鹿F1は、いまでは「伝統のグランプリ」。ドライバーたちが必ず世界のベスト3に挙げる人気の一戦として定着している。
1962年、自然の起伏を生かして設計されたサーキットは、50年の時を経たいまも「F1の走行にもっとも適したコース」と評価される。2009年以来、4度の挑戦で3度の勝利を飾ってきたセバスチャン・ベッテルは「F1マシンは、こういうコースを走るために生まれてきたんだ」と感激し、チェッカーフラッグを受けた後も「もっと走り続けたかった。神の手でつくられたサーキットだ」と表現した(※2013年も彼は優勝した)。
マシンの性能と同じくらい、ドライバーの技術が求められるコースでもある。すべてのコーナーが異なる性格をもち、簡単に抜けられる区間は皆無に等しい。ドライバーは難しいコースほど「チャレンジング(挑戦の甲斐がある)」と歓迎するが、世界一の人気を誇るS字区間だけでなく「テグナーもヘアピンも、スプーンもシケインも、鈴鹿では1ラップすべてがチャレンジだ」とフェルナンド・アロンソは言う。
1周のあいだに、息のつける区間がまったくない。ルイス・ハミルトンは「僕らに残された、数少ないオールド・スクールのようなサーキットだ」と讃える。ドライバーが手を抜くと、マシンが優れていても決して速く走れない。そして周回を重ねるほど、ドライバーの体内に魔法のようなリズムを生んでいくレイアウトでは、誰も手を抜かない。
そんなテクニックを見抜く観客が、22人全員に声援をおくる。テレビには写らない”小さな手柄”も、それをきちんと讃えるファンが後押しをする。こうして、コース上と観客席で壮大な相乗効果が生まれていくのが日本グランプリ最大の特徴で、ドライバーたちを魅了する理由なのだ。
引用:Sports Graphic Number (スポーツ・グラフィック ナンバー) 2013年 10/17号 [雑誌]
「ベッテルと4人の王者を加速させる”鈴鹿の魔力”」
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