話:鈴木大拙
日本につぎの言い表しがある。
「天台は宮家、真言は公卿、禅は武家、浄土は平民」と。
この言葉は日本の仏教各宗の特色をよく表している。天台と真言は儀礼主義に富んでいて、その諸儀式を行うや、なかなか煩雑で、手のこんだ華麗豪奢なものがあるので、それが洗練された階級の嗜好に投ずるのである。浄土宗はその信仰と教義が単純であるから、おのずから平民の要求に応じている。
禅では究極の信仰に到着するために、最も直接な方法をえらんだほかに、これを遂行するに異常な意力を要求する宗教である。そして、意力は武人のぜひとも必要とするところのものである。もっとも、禅は意力だけでなく最後は直覚によって解決をつけるべきものではあるが。
引用:鈴木大拙『禅と日本文化 (岩波新書) 』
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