話:のぐちやすお
これまでに2回の自転車世界一周を実践し、107ヶ国12万kmを走ってきた(総走行距離35万km)。そして今もなお、毎年1回は長距離を走ることで、海外サイクリングの感覚を維持できるように努めている。そんなことを30年以上も続けてきた。
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『自転車漂流講座』シリーズを手にしていただいた方はすでにご存知のはずだが、私はメカに疎い。一緒に走っていると、「その程度の知識でよくもまあ何事もなく世界が走れましたね」と言われるほどだ。
しかし時として、知識は邪魔になることがある。現に、カーボン・フレームとアルミ・フレームの違いは知らなくてもサハラ砂漠は越えられたし、ブラケットという名を知らなくてもアンデス山脈は越えられた。けれども、わずかなリムのブレが気になるような、常に効率のよい走りを求めるサイクリストだったら、そんな悪路には手が出せないだろう。むしろ、”知らなかったから越えられた”と私は確信している。
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実践はいかなる能書きにも勝る。
たとえ、こういう状況ならこういう行動がベストである、と説いたところで、当人がそれだけの場数を踏んでいなければ説得力はない。だから漂流講座シリーズの当時から、すべてにおいて実践の結果だけを踏まえた内容に徹してきた。
しかし私とて、すべてを試してきたわけではない。一度経験して得た結果とはいえ、周囲の条件が変わってくれば結果も自ずと違ってくる。だから、これらの記載がすべてにおいて正しいとは私自身思っていないが、まちがってはいない。
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最後にこれだけは断言できる。心底自転車が好きで、どうしても我が目で世界を見てみたいという好奇心さえあれば、誰だって世界一周できる。
引用:のぐちやすお『自転車で地球を旅する 』
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